新年:初明り、賀状、四日。春:余寒、春の風邪。
2020.12
我になほほどほどの夢初明り年賀状拙き一句添へし悔い
大吉も護らぬ風邪の四日かな
酒いかが背中に誘ふ余寒かな
銚子つつむ手から癒ゆるや春の風邪
冬:咳、羽子板市、日短。 新年:去年今年。
2020.11
吽形の貌して咳を怺へたる
遠巻きも呼ばれて手締め羽子板市

いさぎよき裸の欅日短か
憂きことは言はず思はず去年今年
冬:十一月、十二月、風邪薬、冬小菊、花八つ手
2020.10
十一月俄かに老いぬさるすべり清水の一ト文字如何十二月
医者厭ふらむ微熱風邪薬買ふ
病むひとに逢へず古りたる冬小菊
足るを知るは老への褒美花八つ手
冬:おでん、枯尾花、山眠る。
2020.1
おでん屋に客を追ひ込む襟の風

逆光と風はともがら枯尾花
裾を縫ふ水なき川や山眠る
冬:凍て月、春近し。春:寒明け、冴返る
2019.12~20.1
凍て月やポストの頭仄白く眠き日の雨音しづか春近し
寒明けの地蔵の頬のゆるみかな
やり直す採血の針冴返る
新年:初明り、初景色
2020.1
ほどほどの八十路の願ひ初明り枯色のまま予定地の初景色
冬:石蕗の花、冬の日、年忘
2019.12
石蕗の黄の色を奪ひて暮れにけり
冬の日や微笑む風の生れけり
選り迷ふ笊の酒杯や年忘

冬:風花、切干、短日。
2019.11
風花や地蔵に褪せし朱の被り

風花に頬を吹かれて蕎麦屋酒
日の粋な仕置き切干日々細る
短日やふるさと訛り湯気の先
冬:立冬、大根引、帰花、銀杏枯る、熱燗
2019.11
冬立つや細くなりたる脹ら脛大根引く土の香温し大き穴
強かな生命の証し帰り花
天を衝く公孫樹裸木街黙す
結論はつぎ会ふときに燗熱し
△TOP
冬:寒、冬枯、注連飾( ) 、冬ざれ、
2019.1
星を隠し寒の満月孤高なる
天頂に満月凛と寒きびし
冬枯の大地に秘むる息吹かな


裏の戸の開くを確かめ注連飾る

冬ざれの吽形不動踏ん張れる
冬:山眠る、寒椿、寒に入る、冬晴、冬温し
2018.12
山並の互ひに凭れ山眠る寒椿ひとつ開くを告げにけり
赤き実のいよいよ赤く寒に入る
冬晴やわが道を行く鳩過
背の丸き老を引く犬雪曇
冬:小春風、熱燗、帰り花
2018.12
予定なき今日のふくらむ小春風
熱燗や本音のやうな語り口
日暮るるや命あかあか帰り花

冬:冬の朝、霜柱、襟巻
2018.11
逸早く厨の明かり冬の朝
赤き実を乗せて暮れたり霜柱

襟巻の中に溜息通り風
電話口ふと出づ訛り小春かな
鞄には折畳み杖冬紅葉
冬:枯菊、葉落つ、根深汁、年忘、雪模様
2018.11
枯菊の影やゆかしきときのまま葉落つや日の影遊ぶ川の底
熱退きし朝また熱き根深汁
舌戦の前の黙祷年忘
猫抱いて視るふるさとの雪模様
冬:神の留守、小春日、秋雨
2018.10
狛犬の台座の苔や神の留守
小春日や降りる人なく汽車動く
子の忘るベンチの帽子冬日向
冬:大年、寒に入る、寒、春近し
2017.12
大年やポストに落とす二百枚
山々の天を衝く意気寒に入る
竹箒掃く音澄むや寒の道
歩も息も合ひしふたりや寒最中
夢の一字刻む墓標や春近し

冬 :山眠る、冬の野。 新年:初明り、初手水、賀状。
2017.12
頂は入る日にゆだね山眠る冬の野は寡黙行く川また無言
カーテンに捷き鳥影初明り
指先の小さき切傷初手水
生老
冬:冬の蜂、銀杏落葉、木守柿。秋:文化の日。
2017.11~12
指先に命ありけり冬の蜂

銀杏落葉終の黄金の光踏む
木守柿余生安らぐ没日かな
冬立つや流星群の夜をさがす

行く先は問はず達者に冬の蜂
読まざりし書に書架溢る文化の日

冬:小春、咳、落葉、凍て風、冬ざれ
2017.10
風遊ぶ罅
露天風呂孤灯の径を咳の音
落葉踏む音沈黙を許しけり
凍て風を引き連れ増へし客ふたり
冬ざれや朱の文字褪せし掲示板

冬:立冬、水鳥。
2017.10
冬立ちぬ前掛け替ふる石地蔵
冬立つ日まだ去年物チリワイン
水鳥の水尾

水鳥の呼び合うて日の衰へぬ
冬:冬に入る、霜夜、冬障子、浮寝鳥、枯木。
2017.10
秒針の急かす小走り冬に入る寝返りの小さくなりぬ霜夜かな
海に融け褪する没日や冬障子
水襞に月影散るや浮寝鳥
庭枯木枝切る詫びは無言にて
冬:冬の日、冬立つ。秋:団栗。
2017.10
野球帽ベンチに残り冬日没る冬立つや猫背を正し歩を広く
どんぐりを拾へばどんぐり踏みし音

新年:元日、初霞、七日粥。
2017.2
端つこの孫の名を訊くお元日

喜寿詣先頭車両初霞
年神の別れに熱き七日粥
冬・新年:北風、木枯、凍て風。三が日、松納。
2017.1
北風を悪者にして酒肆に入る
木枯しに抗ひ戻る裏参道
凍て風の話題しばらく宴に入る
乱れたる机辺そのまま三が日
歳神は長居ぞ昏れて松納む
(「五日会」初出句)
冬:冬帽子、暮の市、冬日。湯豆腐。
2016.12
<浅草歳の市・羽子板市>
市に入りただ流されて冬帽子力車行きチンドン囃す暮の市
きもの行く街彫り深く冬日影
湯豆腐のいくたび泡に浮き沈み

冬:年忘、大年、寒、春近し、春隣。
2016.12
舌戦に勝ち負けはなし年忘
大年のこの一日の重さかな
山幾重白き半月寒に入る
次の衣をまとふマヌカン春近し
花時計傍
冬:春待つ、雪間( 。
2016.12
枝先に命の兆春を待つ
荷捌きの真白き軍手春を待つ
うつくしきときの始まり雪間かな

跳び損ね雪間に声の甲高く
冬:十一月、枯野道、日向ぼこ、初時雨、冬の雨。
2016.10
こと成らず十一月も終りけり
落つる日や細くなりたる枯野道

日向ぼこ昨日と同じひとり言
京にあれば杉香りくる初時雨
主去りし蜘蛛糸垂るや冬の雨
冬:時雨、咳。
2016.10
庭石を鮮やかにして時雨去る
金色堂包む大杉夕時雨
ふる里も咳には訛無かるべし

運転士咳
冬:小春。
2016.10
思ひ切り猫伸び欠伸小春かな快癒せるごと足軽し小春風
微雨あれば土匂ひ出づ小春かな
冬:冬、師走、冬の雲、寒の入、大寒、成人の日
2015.12
冬すでに急須の口の湯気の濃し
墨を磨る音もせはしき師走かな
オリオンをひとつづつ見せ冬の雲
手を擦
大寒やボタンの穴の定まらず
成人の日息激しかれ道難し
冬:北風、冬立つ、千両
2015.11~12
北風の叩く馴染の縄のれん

オリオンの姿確かむ冬立ちぬ 千両も万両も見つ坐禅堂
冬:冬紅葉、障子
2015.10
色を重ね装ふ一樹冬紅葉
ひと雨に色戻りくる冬紅葉
たまゆらの日影まばゆき白障子

歳時記と障子二枚の別世界
冬:マスク、寒に入る、鮟鱇、大晦日。
2015.1
声なくてマスクの動く会釈かな
寒に入るふる里を見に上野駅
鮟鱇も磔
世に遠し知らぬ歌聞く大晦日
冬:歳末、初競り、冬ざれ、湯冷め。
2014.12
歳末や落つる籤玉初競りの喧騒の中魚眠る
冬ざれや菖蒲田なりし水たまり
みちのくの宿の湯冷めや旅手帳
冬:帰り花、炬燵、ぼろ市
2014.12
散り忘る紅鮮やかに帰り花
他愛なき話集まる炬燵かな
ぼろ市や昃( り骨董らしくなり
世田谷ぼろ市にそのままの形の毬栗の炭を出すと聞いて
ぼろ市や毬栗( の炭探しえず
他愛なき話集まる炬燵かな

ぼろ市や昃
世田谷ぼろ市にそのままの形の毬栗の炭を出すと聞いて
ぼろ市や毬栗
冬:日短か、片時雨、柳枯る、落葉。秋:鶏頭
2014.11
槌の音俄に忙( し日短か
完走のコースに礼を片時雨
柳枯る銀座に知れる店はなく
晩秋の雨の子規庵にて
生命ひとつ譲りし落葉動きけり
鶏頭の傾ぐ根岸の庭に雨
完走のコースに礼を片時雨
柳枯る銀座に知れる店はなく

晩秋の雨の子規庵にて
生命ひとつ譲りし落葉動きけり
鶏頭の傾ぐ根岸の庭に雨
冬:酉の市、笹鳴ささなき
2014.10
客売手みなほろ酔うて酉の市 
江戸つ子となりたる気もす酉の市
笹鳴に話半ばで終りけり
笹鳴を隣家に送り夕ぐるる

江戸つ子となりたる気もす酉の市
笹鳴に話半ばで終りけり
笹鳴を隣家に送り夕ぐるる

冬:探梅、寒
2014.1
探梅やつまりは酌みて小料理屋 

目薬の頬を伝ひて寒きびし


目薬の頬を伝ひて寒きびし

冬:凍て風、湯冷め、歳の市、風花、寒
2013.12
手を上げて凍て風の中一輪車
湯冷めして何か盗られしごとく寝る
歳の市人は淋しき仮面にて
寺屋根を越え風花の永らへし
風花や高き墓苑に父母眠る
寒の風起ちて日陰る母忌日
長旅の神も寛ぐ小春かな
湯冷めして何か盗られしごとく寝る
歳の市人は淋しき仮面にて
寺屋根を越え風花の永らへし
風花や高き墓苑に父母眠る

寒の風起ちて日陰る母忌日
長旅の神も寛ぐ小春かな
冬:マスク、北風
2013.10~11
マスクとり鉢の蕾を比べみる 
唇を噛むを隠せるマスクかな
北風や今なほ父の諭す声
北風やとほき縁ある墓一基

唇を噛むを隠せるマスクかな
北風や今なほ父の諭す声

北風やとほき縁ある墓一基
冬:神の留守、焼芋、海鼠腸( 、咳
2013.10~11
痛きほどの拍手届かず神の留守
店の灯の消えて芋焼く火の赤し
海鼠腸の土産夜更の独り酒
盛大な拍手まで待つ堪へ咳
店の灯の消えて芋焼く火の赤し
海鼠腸の土産夜更の独り酒
盛大な拍手まで待つ堪へ咳
冬:寒に入る、雑炊。
2013.1
後退( るほどの山容寒に入る 
雨の打つ山泰然と寒に入る
雑炊の具のゆたかなる遅朝餉

雨の打つ山泰然と寒に入る
雑炊の具のゆたかなる遅朝餉
冬:寒に入る、冬ぬくし、早梅、雪達磨
2012.12~'13.1
雨の打つ山泰然と寒に入る
身の内に確かな傷み寒に入る
麦の畝乾く匂ひや冬ぬくし
早梅や二の腕細き早生れ
誰に似し日陰者なる雪だるま
身の内に確かな傷み寒に入る
麦の畝乾く匂ひや冬ぬくし
早梅や二の腕細き早生れ
誰に似し日陰者なる雪だるま
冬:年の暮、今朝の春、手焙、初御籤( 、息白し
2012.12
捨てきれず隅に本積む年の暮繰言は言はずと決めて今朝の春
手焙や神札所の人の途切れたる
小吉に不平などなし初神籤
襷継ぐ笑むも叫ぶも息白し


冬:かんじき
2012.12
かんじきやみな年寄の歩むごと
かんじきで行くは忍者か疾うに消ゆ
かんじきで行くは忍者か疾うに消ゆ
冬:十二月、冬温し
2012.12
無為の日を幾度顧み十二月立話また一人入り冬温し
冬:冬に入る、神の留守、煤拂
2012.11
石畳掃く音乾き冬に入る
大岩の縄色失せて神の留守
掃き寄せて参道狭き神の留守
煤拂高きにありぬ古手紙
物寄せて発見のある煤拂
大岩の縄色失せて神の留守
掃き寄せて参道狭き神の留守
煤拂高きにありぬ古手紙
物寄せて発見のある煤拂
冬:柿落葉、落葉風
2012.10
実を枝にいのちまつたう柿落葉音も香も変らぬ城の落葉風
冬:枯蓮( 、落葉、湯冷め。
2011.12
穏やかな日和もありぬ枯蓮
豊かなる根を誇らずに蓮枯る
樹々はいまひとりになりぬ落葉径
終ひまで皆既月食湯ざめかな
豊かなる根を誇らずに蓮枯る
樹々はいまひとりになりぬ落葉径
終ひまで皆既月食湯ざめかな
冬:短日、鰭酒( 、花八手、置炬燵、年の暮。
2011.12
短日や嵯峨野の下り路を疾く鰭酒の青き炎と遊びけり
残されし蜂の飛ぶなり花八手
寄りてゐし顔は四方に置炬燵
忘れゐし礼状いくつ年の暮
温め酒微酔たちまち柳都かな
「柳都(りゅうと)」は新潟市の異称。
冬:落葉焚く、日向ぼこ
2011.10
かの匂ひ法度となりし落葉焚く日向ぼこ夢寐
思ふことみな淡くして日向ぼこ
冬:寒九、冬座敷、冬晴れ、節分、皹(
2011.1~2
一床の空きて寒九の夜となりぬ住む人も忘れしごとき冬座敷
冬晴の更地の家や母忌日
節分や鬼は神なり鬼も内
皹の手を延べて注ぎ足す郷
冬:紅葉散る、返り花、障子、雪吊、冬帽
2010.12~11.1
うつくしき命のままに紅葉散る幼木も負けじとひとつ返り花
障子閉ぢ締切近き句を敲く
雪吊をつつみて速き入り日かな
冬帽を加へて旅荷整ひぬ
朱
冬:時雨、空風、賀状書く
2010.12
ひつそりと時雨の下の足湯かな空風にいよよさえざえ軍星
幼顔
冬:枯木、枯木山
2010.11
夕焼の金の枯木を造りけり家並に淡き影おく枯木山
冬:冬茜、日短、蜜柑、冬木立
2010.1
宵星を連れて褪せゆく冬茜日短や昼残したる握飯
失せ物はいづれ出づべし蜜柑剥く
低唱の寮歌の過ぎて冬木立
冬:日短( 、室咲( 、神の留守
2009.12
山門を抜けくる落暉室咲の花の憐れや友の逝く
頼みたきことまた増へて神の留守
冬:しづり雪、雪しぐれ、日脚伸ぶ
2009.12
中天を分けるクレーンやしづり雪信号の赤を過
日脚伸ぶ山椒の棘影定か
冬:鴨、小春日、散落葉
2009.11
好日や水面を滑るつがひ鴨残照に飛沫
小春日や吾を映せし父母の墓
山影の降りくる街や散紅葉
冬:霜夜、襟巻、凍る。 新年:去年今年
2009.1~2
水割のジンの音澄む霜夜かなマフラーを厚手に替へて遠き旅
鐘の音の凍て届きたり古稀の朝
目の合うて猫の欠伸や去年今年
冬:凍てる、根深汁
2009.1
凍てし頬を覆ひて長き橋渡る熱退きし朝また同じ根深汁
冬:冬日向、冷たし、咳、風邪籠(
2008.12
冬日向小吉の籤結びけり文鎮の冷たきを置き摩訶般若
同じやうな咳する男座りけり
片付かぬ本に囲まれ風邪籠
冬:年忘、数へ日、角巻
2008.12
彼( も我も話に尾鰭( 年忘
数へ日や夕焼を背に山座る
角巻に似た人の目の伏せられて
数へ日や夕焼を背に山座る
角巻に似た人の目の伏せられて
冬:冬に入る、山眠る、冬木立
2008.11~12
山襞を瞭山眠る杉も立ちゐて眠りけり
山眠る往古の夢を手繰りてむ
冬木立影入り交ひて夕日去る
冬:札納、息白し、今朝の雪
2008.1
故郷の神札手鏡に紅なほす巫女息白し
土雑じり野うさぎとなる今朝の雪
冬:木枯一号、雪冠、年賀欠礼
2007.12
襟首を木枯一号山光る旧き友雪冠る山ありがたし
雪の碑や十五の春に去りし街
気丈夫な添書年賀欠礼状
冬:冬の鵙( 、一茶忌、目貼( 、
2007.11~12
入院の母の背痛む冬の鵙露の世に齢重ねて一茶の忌
古里の家に父母なし一茶の忌
大層な仕事せしごと目貼終ふ
冬:霜夜、年の市、冬構、寒卵
2006.12~07.1
星がみな大きくなりぬ霜夜かな嗄
陽だまりに茶喫む庭師や冬構
老鶏のくぐもる声や寒卵
寒卵粥の真中に埋もれけり
冬:しぐれ鍋、漱石忌、大晦日、息白し
2006.12~07.1
深川に護摩木納むやしぐれ鍋漱石忌素知らぬ顔の猫過
顧みず繰りごと言はず大晦日
灯
冬:大根引く、落葉、散紅葉
2006.11
大根引く大地あらがふこともなく
大根を引く影長し粗筵
大き樹の枝を頼まず落葉かな
葺替への寺の瓦に散紅葉
大根を引く影長し粗筵
大き樹の枝を頼まず落葉かな
葺替への寺の瓦に散紅葉
△TOP
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Last Update:2024.2.14。
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