春:花、朧夜、春疾風、啄木忌、花冷
2020.3
気を持たす標本木の花一輪朧夜や傘寿息災急ぐまじ
病む友の古き手紙や春疾風

心奥のふるさと目覚む啄木忌

一献に癒し求むや花の冷え
春:花の山、花万朶、花疲、夕桜、花の塵
2020.2
褒め言葉らしき異国語花の山天地みなわがものにして花万朶
さりながら一献老いの花疲
薄明りなれば生きいき夕桜
誉められて咲き抜きこの日花の塵
春:遅日、日永、紫陽花、短夜
2019.4
メトロ降り遅日の街の賑ひに
池の面
紫陽花のありて明るき雨となり
短夜や泣いて寝る子のうまし夢
春:花、花屑
2019.3
墨堤に花咲満ちて風のまま花屑を土に還して夜雨過ぎぬ
春:ものの芽、青き踏む、春の川、風車
2019.3
ものの芽やまた一年の幸賜ふ
独り言ち励ます傘寿青き踏む

わが影をさざ波にして春の川
子ら燥ぐペットボトルの風ぐるま
春:春の川、初蝶、うららか、長閑
2019.2
せせらぎは神笑むところ春の川初蝶を吹く川風の容赦なき
うららかや犬と目が合ふ車椅子
忘れたる歌詞はララララ舟うらら
長閑さや猫も甘えを覚えけり
春:春の川、春寒、余寒
2019.2
子ら覗く何かあるらし春の川

蹠
両の手で銚子を包む余寒かな
春:春寒し、春の風邪
2019.2
春寒し同じ礼言ふ販売機


自慢せしその翌日の春の風邪

春:長閑、行く春。
2018.4
春は曙古き言の葉長閑けしや行く春や叶はぬ夢と見る夢と

春:花万朶、花降る、花疲。
2018.3
全天の蒼花降るや悠然として芭蕉像
老い至福大川端の花疲
春:春雷、霞、耕人、遠霞。
2018.2~3
句誌届く春雷の中赤バイク
新しき土匂ひくる霞かな
畝真直ぐ耕人ひとり動かざる

山々の召替へさなか遠霞

春:雪解道、春動く、残雪、余寒、春うれひ
2018.2
雪解道出会ふふたりの国訛り
浮かび寄る鯉の背びれや春動く
残雪を貫き奔
独酌の燗のぬるさや余寒なほ
みちのくの春はうれひの津波痕
春:水温む、甘茶。
2018.2
さざ波の光幾千水温む
五つほど石跳び渡り水温む
雲映す杓の甘茶や幼な仏
幾杓か佛とあそぶ甘茶かな
春:春の雨、霞、三・一一、初蝶、松落葉。
2018.2
丸筒に妣の免状春の雨霞みても山は違はず南部富士
備蓄水取替へてまた三・一一
初蝶のをののき過
松落葉いつから着けし干支根付
春:寒明、冴返る、霞、鳥帰る。
2018.1~2
鎧戸の開く音軽し寒明くる
酒蔵の濃き湯気の朝冴返る
目覚めたる大地の息吹春霞


崩れきし飛行機雲や鳥帰る

△TOP
春:春寒し、霞、春の雨、土筆、四月尽
2017.2~4
悔み状なほ書きそびれ春寒し夕がすみ鉄橋跨ぐ長き貨車
止り木といふ小さき椅子春の雨

土筆摘む幹線たりし線路ぎは
四月尽役目果たせし祈願絵馬
春:春立つ、枝垂梅、はだれ雪、三月、春時雨
2017.2
一病は生くる道すぢ春立ちぬ
風ごとにひととき舞ひて枝垂梅

薄ら日や残る昨日のはだれ雪
三月はいまだ枯色津波跡
喜寿誕辰花買ひくれば春時雨
春:独活( ) 、鳥の巣
2017.2
山独活を誉めて客過ぐ道の駅古里の山独活小鉢香り濃き
巣鳥鳴くや宅地に変はる町の山

鳥の巣の気配峠の暗みより
春:梅日和、菜種御供。
2017.2
いくつもの社に願ひ梅日和
御礼の人も参るや菜種御供( )
恋願ふ絵馬見当たらず梅日和
春:春の雨、春の夜、涅槃図、朝寝。
2017.2
点滴の妻微睡( むや春の雨
春の雨上がりて三日ほどの月
反る屋根の光る春の夜大社
それぞれに歎きの形涅槃絵図
足痙りて良き夢仕舞ふ大朝寝
春:冴返る。
2017.1
整ひたる町の静寂や冴返る 
装はぬ白きマネキン冴返る
春:朧、憲法記念日、こどもの日。
2016.4
わがゴールデンウィーク
皆朧昔天皇誕生日憲法記念日古き六法ありがたし
なにもなき日になりなん年こどもの日
春:花水木、花過ぎ、暮の春、八重桜、山桜。
2016.4
暮れなづむ道花水木歩をゆるめ

崖高き花過ぎの川風ばかり
うづくまる猫の目かなし暮の春
返信を延ばし延ばして八重桜
遅れ咲くことは誇りぞ山桜
春:花曇り、花、花明り。
2016.4
弁当に一片文京区・関口芭蕉庵
古池に花の浮かびて芭蕉庵橋過
春:花の雨、花冷え。
2016.3
四阿
花冷えやわづかな酔ひに身を包む
春:薄氷( 、花の雨
2016.3
薄氷をいくつ苛
後
薄氷や風のなすままはづれ岸
一燈に一樹寄り添ふ花の雨
春:春、春寒し、春の風邪、雪囲ひ解く、風光る。
2016.2
春の土生きとし生けるもの匂ふ亡き友の名残る名簿春寒し


コーヒーの香はかくなるか春の風邪
雪囲ひ解く鎌光り雲一朶
放りおく庭枯れしまま風ひかる
春:蜆、しゃぼん玉。
2016.2
濡れまいとしても膝上蜆採
愛想よくひと握り足す蜆売
溜息も吹けば虹色しゃぼん玉

束の間の小さき宇宙しゃぼん玉
春:梅
2016.2
世田谷区梅が丘羽根木公園にて梅見
梅多彩咲き満ち空の耀ける空和み人また和み梅まつり
飛梅や瑞枝
見驚
春:梅見、梅。
2016.2
やはらかき梅見の土を戻りけり梅指しつ少年の押す車椅子
青梅なる梅なき梅の郷あはれ
春:野焼。
2016.1
端山より吹かれ来し香や野焼塵
遠目にはなべて黒ぐろ野の焼くる
春:遅桜、飛花落花、忘れ霜
2015.4
人待つや駅の端なる遅桜
子規駆けし野球場跡飛花落花
聞き上手の上司の訃報忘れ霜
春:花、花疲
2015.03-4
一駅を歩くは易し花の昼

花人となれば花びら傘の上
雨止まず花は命を長らへて
ほろ酔ひかはた酔覚めか花疲
春:桜餅、菜の花、おぼろ、春めく
2015.3
葉一枚残し留守居の桜餅
雨に旗濡るる老舗の桜餅



菜の花に色をゆづりて昼の月

端山消え夕星
春めくや珈琲を置く外の卓
春めくや道路工事の穴黒し

春:つるし雛、余寒
2015.2
むかふ向き紅の衣裳のつるし雛
手帳の字少し歪める余寒かな
春:凍てゆるむ、薄氷( 、水温む、春、春寒し
2015.2
凍てゆるむ黄の花庭に三種ほど薄氷の残り試験の日の暮るる
水温む流るる草と歩みけり

暦では春と伝へて雪予報

竹の葉の音の乾きて春寒し
春:芹、うららか
2015.2
畦弛む危ふき腰で芹を摘む芹の香やふるさと訛聞くやうな
うららかや昼どきに発つ京の宿
うららかや間延びせし歌下校の子
春:春立つ
2015.2
立春の日、快晴の皇居東御苑にて
春立つやこの門往きし昔人春立つや友に合図の手の白き
春:下萌(
2014.12
3.11巨大津浪が多くの命を奪い去った
下萌や人盗りし浜荒るるまま
下萌や老いに励みの土香る
春:しゃぼん玉、花過ぎ、藤
2014.4
九天の色を映してしやぼん玉花過ぎていつもの宿に戻りけり
ちびつ子の届かぬやうに藤垂れり
春:春の夜、春の夢、小鮎、 夏:夏帽子
2014.5
草庵の卓にいくつか夏帽子内示あり小鮎の光る背と波と
今だから言へる春の夜クラス会

春の夢あまりに若き妻のゐて
春:木の芽和( 、櫻草、耕人、芝青む
2014.3~4
粗肴とて庭の恵みの木の芽和池の端に明日待つ蕾櫻草
耕人のはるかな影を追ふ没日

杭に干す小さき靴や芝青む
春:啓蟄、耕す、彼岸、落椿、朧
2014.2
啓蟄や拾ひ残しの豆転ぶ眠りゐし土のぬくみを耕せる

卒塔婆の古りて彼岸の風に鳴る

掃き寄せて山なす美形落椿
他愛なき諍ひ留まる朧かな
春:東風、朝寝、春の雪
2014.2
東風鳴らす絵馬にあまたの願ひごと
ステッキの軽きを選りて東風の道
極楽と言ひてたまさか母朝寝

職退きて疾
春:春の霜、春遅し、春、春の雪
2014.2
くつきりと隣家の影や春の霜それぞれに神宿る杉春浅し
老杉に耳当て聴かむ春の音
口笛のかすれて過ぐや春の雪

春:忘れ霜、春、佐保姫( 、春の雷
2013.4
美しき星夜を呼びて忘れ霜 
蕊( 踏むや佐保姫通り抜けし道
何か始めよと催促春の雷

巨大津浪に堪え陸前高田の浜にたった一本残った松を人工保存
よみがへる命の松や浜の春蕊
何か始めよと催促春の雷
春:菫、海苔、花筵、蛙
2013.3
遠山のあれば詩になる菫かな

軽き荷の覚束なさや海苔送る
あの後の顛末を訊く花筵
犬とても踏むなよすみれ弱きもの
特上と聞きねんごろに海苔焙る
寝そびれてまだあの声の蛙かな
春雷に噂話の途切れたる


軽き荷の覚束なさや海苔送る
あの後の顛末を訊く花筵
犬とても踏むなよすみれ弱きもの
特上と聞きねんごろに海苔焙る

寝そびれてまだあの声の蛙かな
春雷に噂話の途切れたる

春:春昼、菜花漬、卵粥
2013.3
水尾分かつ春昼の海真青なる

一献を干して小鉢の花菜漬
永き日や無聊の床の卵粥
春:啓蟄、春の夜、青き踏む
2013.2
啓蟄や白壁眩し地酒蔵春の夜の一献に笑み幼な顔
踏み跡を振返りつつ青き踏む
春:春昼、合格、雛の家、三月尽、桜
2013.2
春昼や小さき影に追ひ越さる赤飯の香の門にあり合格す
生ひ立つは誰の記念樹雛の家
若人の別れは飛躍三月尽
白髪に枝垂れて触るる桜かな
春:日永、白酒
2013.2
永き日や路地に昔の遊びなく鳴りつづく呼出音の日永かな
白酒に備へ頬紅もう一度
春:花、桜まじ、山桜、遅桜、燕、長閑さ
2012.4
高空と花を従へ天守閣転移なしと告げらる帰途の桜まじ
一盞に酔ひて愛しき山ざくら
一万歩誉められもせず遅ざくら

白黒の写真にてよし夕燕
長閑さや調子はづれの笛とほる
春:啄木忌、遅日、蛍烏賊
2012.4
没後百年、文京区小石川の啄木終焉の地の碑は取り払われたまま。1912年4月13日歿。
「終焉の地」碑なき啄木百年忌怪我二十日腫れ退く遅日酒少し
螢烏賊出され長びく日酒かな
春:春一番、三・一一、春の雪、鶯餅、春遅し、鳥帰る
2012.2
春一番この止り木に去年も在りみちのくといふ店に入る三・一一


自転車の漕ぎ足速し春の雪
掌に受けし鶯餅の重さかな
流亡の仮設にしげき春の雪
みちのくの破船の海辺春遅し
復興に憂ひ残して鳥帰る
春:朧、涅槃
2012.2
汝が影を追ひし日ありき星朧厄介なことを朧に捨てに行く

大三角西に残れる朧かな
かりそめの生命重ねて涅槃の日

己こそ己の寄る辺涅槃かな
春:猫柳
2011.12
ねこやなぎ盛岡なまりやはらかし
みちのくに季節めぐりて猫柳

春:鳥の恋、たらの芽
2011.04
巨大津浪も恋するの鳥には―
大空に波は届かじ鳥の恋
たらの芽の旬と言はれてもう一献

春:啄木忌、春茜、ふらここ
2011.4
妣
街燈の羞ひ点る春茜
ふらここや口笛覚えはじめし子
春:壺焼、余寒、苗札、春疾風(
2011.2-3
回廊の余寒を踏みて瑞巌寺
壺焼の香ありし町の津波跡
春疾風縄跳の手の止まりたる
苗札の美しき名に誘はるる
壺焼の香ありし町の津波跡

春疾風縄跳の手の止まりたる

苗札の美しき名に誘はるる

春:桜狩、花見、春の水、畦塗( 、西行忌、春の雨
2011.2
足病みて傘杖に謝し桜狩花を見て世を怒りたる人多き
春の水岩を選びて下りけり
畦塗や休み休みの爺ひとり
旅行書を並べ替へけり西行忌
貝殻の砂を洗ひて春の雨
春:猫の恋
2011.2
狭庭恋猫の勾玉のごと寝ねにけり
春:花水木、朝寝、花祭、啄木忌
2010.4
分譲の旗立つ道や花水木ラジオの音夢に入込む朝寝かな
転入の子もふたりゐて花まつり
薄れゆく飛行機雲や啄木忌

詩「飛行機」 石川 啄木
見よ、今日も、かの蒼空に
飛行機の高く飛べるを
給仕づとめの少年が
たまの非番の日曜日、
肺病やみの母親とたった二人の家にゐて、
ひとりせっせとリイダアの独学をする眼の疲れ……
見よ、今日も、かの蒼空に
飛行機の高く飛べるを
春:春暖、花見、別れ霜、花辛夷、桜
2010.4
春暖や入り日を映す轍水
病み居れば分厚き花見案内来る
庭に出て猫すぐ帰る別れ霜
日の没るやいよいよ白し花辛夷
迫
春:春田、青き踏む、春の山、日永
2010.3
その昔牛などをりし春田かな

古稀までも恙なき日々青き踏む


生れ出づ小さき水音春の山
甲高き声路地にある日永かな
己が影追ひて日永の一万歩
春:冴え返る、余寒、啓蟄
2010.3
物落つる音のみありて冴え返るやや大き盃選りて余寒かな
啓蟄の日の土塊を輝かす
春:春の風邪、花疲( 、昼蛙、連翹、うららか、啄木忌
2009.4
春の風邪独りよがりのラジオ鳴る 
デジカメに閉ぢ込めてあり花疲
一合の酒あればよし昼蛙
連翹や隣の庭をのぞく癖
うららかや猫の目瞑ること幾度
啄木忌奥に声ある等光寺

デジカメに閉ぢ込めてあり花疲

一合の酒あればよし昼蛙
連翹や隣の庭をのぞく癖
うららかや猫の目瞑ること幾度
啄木忌奥に声ある等光寺
啄木の葬儀が行われた浅草・等光寺は吉井勇の実家である
春:梅、啓蟄、西行忌、花時
2009.3
梅一輪百花に適ふ忌明けかな
梅咲いて何怒りしか忘れたり
啓蟄や習ひ始めの一輪車
啓蟄や怖ぢけず背伸び発表日
違へずに花咲き始む西行忌
花時や妻は憂ひを捨つごとし
春:梅一輪、つるし雛、薄紅梅、青ぬた
2008.3~4
けさ初の話は開く梅一輪夕映えや花と競はずつるし雛
我が生れし日に君逝くや薄紅梅
青ぬたや主
春:雛、雛祭、朧夜
2008.3
ひな飾る家らし子らの歌ふ声
雛祭朝のあいさつ歯切れ良き
朧夜の一本道を我ひとり
春:蕗の薹、絵踏( 、西行忌
2008.2~3
ガリ刷りの文集出でぬ蕗の薹
これいかが暖簾収めて蕗の薹
狐狸庵( の神父の沈黙絵踏かな 
いきなりの雪も花かと西行忌
これいかが暖簾収めて蕗の薹
狐狸庵

いきなりの雪も花かと西行忌
春:菜種梅雨、春遅し、田螺(
2007.4~5
休酒はや十日になりぬ菜種梅雨
春遅し目路( の果なる青信号
定まらぬ田螺の道や風遊ぶ
春遅し目路
定まらぬ田螺の道や風遊ぶ
春:落花
2008.4
<千鳥が淵>
ボート浮く落花の堀に恋いくつ日本の風の色づく落花かな
頷きて落花の中を車椅子
春:ひこばえ、海棠( 、花、辛夷( 、啄木忌
2007.4
ひこばえや横断歩道を子ら走る海棠の蘂
相客も同じ蕎麦にて花の酒
静もれる板戸の家や花辛夷
忘れゐしピースの香り啄木忌

春:春暁、五加木( 、古草、畑打、啄木忌
2007.3~4
春暁や眠たき犬の曳かれをり春暁や急がぬ旅の早目覚め
春暁や通知待つ日の茶の柱
嬰嬰
古草や採り残したる畝二列
畑打つや眠り足らざる虫まろむ
ふるさとの話とくとく啄木忌
春:麦踏、春宵、朝寝、桃の冷え
2007.2~3
麦踏の影直角に畦を切る
子の足に余る地下足袋麦を踏む
春宵や清水焼の猪口に酌む
朝寝していまだ覚めざる猫と居る
人形の髪漆黒に桃の冷え