夏:百日紅、端居、夜の秋、胡瓜
2020.7
まづ健康父の口癖百日紅句仲間は遠く酒友もなく端居

人ひとり過ぐる息差し夜の秋
棘強き胡瓜をほめて洗ひけり
夏:梅雨晴間、炎昼、夏萩、風鈴、浴衣
2020.6
怠りの日月なれど梅雨晴間炎昼や千木も神樹も動かざる
夏萩や父母の忌未だ修せざる
幾春秋寂びたる里の鉄風鈴
行きどまり返す畦道浴衣の子
夏:夏座敷、青野、日傘、五月、「静」
2020.5
静寂が先客のごと夏座敷

真ふたつに青野を分けて鉄路かな


日傘たたむ深きお辞儀の喪服かな
ふるさとは遠し自粛の五月なる
夏:立夏、夏の雨、木下闇、葉桜、七変化
2020.4

休業の貼紙古書肆夏の雨
不要不急俯き歩む木下闇
訊ねまじ疾うに葉桜家籠
この年はなに色にせむ七変化
夏:梅雨寒、焼酎。 秋:星月夜
2019.7
啄木碑銀座梅雨寒傘滴焼酎の氷縮みて闇静か
医者勧む焼酎も酌む傘寿かな
星月夜そぞろ歩きのわらべ唄
夏:梅雨諸題、夏の雨
2019.6
梅雨寒しひとりホテルのバイキング検査値は経過様子見梅雨の星
梅雨晴間話長引く犬自慢
所在なく捲る地図帳梅雨明くる
崩さるる山に溝掘る夏の雨
夏:枇杷、万緑
2019.6
椋鳥の去れば無慈悲な枇杷の疵

万緑の例外ならず休耕地
夏:新緑、釣忍( )
2019.5
新緑の枝伐る咎の一ト日暮る

町筋の喧噪吸うて釣忍

夏:余花、杜若( 、たかんな、筍・蕗、青嵐
2019.4

つぎ観るは八十路の老ぞ杜若
たかんなや鍬の刃痕の見事なる
盛り鉢に筍と蕗竹お猪口
ひと遅し松葉を運ぶ青嵐
夏:空蝉、梅雨、溽暑、涼し。秋:芙蓉忌、
2018.7
空蝉といふ墓遺し魂何処
梅雨夕焼欄干に倚る湯宿下駄
いささかの風のあざむく溽暑かな

せせらぎに恋歌涼し広瀬川
鳶舞ふや芙蓉忌の空あらたまる
芙蓉忌は村上鬼城の忌日9月17日。鬼城忌、靑萍忌。
夏:晩夏光、万緑、明易し、涼し、薔薇園。
2018.6
鏡中の老斑万緑や終楽章のフォルテシモ
明易やまつさらな日の始まりぬ
洞窟に卒塔婆涼し瑞巌寺
<神代植物公園>
薔薇園の淡き香うばふ通り雨夏:夏帽子、青葉。
2018.6
鍵抜きてこれより自由夏帽子
<女子小学生が殺害され線路に遺棄との報に>
青葉冥夏:浴衣、祭笛、夏燈、風鈴、夏柳
2018.6
膳に着く子のぎこちなき宿浴衣灯ともりて少し擦
夏燈尻取り歌の続く家
<古い南部鉄の風鈴、大震災の日にはなお喧
この角を折れて菩提寺夏柳
夏:喜雨、桐一葉。
2018.6
一廻りせずばと勇む喜雨兆す喜雨の音幾度か立ちてたしかむる
たましひといふ語反芻桐一葉

雨ながら明るき影や桐一葉
夏:緑雨、花水木、夏の雨、青嵐。
2018.5
透きとほる風引きつれて緑雨かな


塾終へし子に薄明り花水木
お辞儀して急ぐ下校子夏の雨
面倒なことを蹴散らし青嵐

夏:新樹、山法師の花。
2018.5
御霊ふたつ新樹の雨に眠りけり
雨烟ぶる啄木の村山法師


夏:夏に入る、緑雨、父の日、梅雨晴間、梅雨明け
2018.4
要治療てふ所見また夏に入る山の香を包みて落つる緑雨かな
父の日のビール大缶プレミアム
太き腕シャツに筆文字梅雨晴間
梅雨明けや草の絡みし水位標
夏:新緑、五月闇。
2018.4
木の株を借り新緑の香をまとふ
新緑を突きてクルスの塔高し
別れ来て友の訃に堪ふ五月闇

子の声の去りて校庭五月闇
夏:新緑、夏めく、山背、鯉幟、夏帽子。
2018.4
見はるかす新緑大地やはらかし夏めくや都心の夜を歩きたし
山背寒む竿に重たき体操着
身を寄せて遊ぶ風待つ鯉幟
あの津波まで知らぬ町夏帽子
夏:夕焼( 、炎暑、盛夏。
2017.7
それぞれの形の夕焼潦
どの影も身を縮め行く炎暑かな
地震
夏:夾竹桃、老鴬、暮なづむ、夏の雨、梅雨晴。
2017.6
さゆらぎて日のなすままに夾竹桃
<仙台・伊達霊廟瑞鳳殿>
木漏れ日や老鶯近き瑞鳳殿暮れ落ちてはためき止まぬ氷旗
下校子の辞儀する肩に夏の雨
梅雨晴や投句帰りの回り道
夏:暑さ、百日紅、夏祭
2017.6
厳めしき山も寝そべる暑さかな

忘れたきこといつ迄も百日紅
子らと居て子にもどる夜夏祭
夏:夏の雨、夏うぐひす、郭公、夏薊、夏草
2017.6
土の香を思ひ出に変へ夏の雨閑けさや気遣ひの声夏うぐひす
郭公の近き渋民啄木碑
供物などなき野仏に夏薊

夏草や一輌の汽車偶さかに
夏:片陰、病葉。秋:新涼。
2017.5~6
去年より大き片陰丸の内

わくら葉や病むとも見えずかくれ蓑
病葉や緑残して吹かれけり
新涼や朝の珈琲香のゆたか
新涼の風抜ける道社殿裏
夏:五月、筍
2017.5
五月号買うて甲斐なき基礎講座

一年生校歌確かめ合ふ五月

筍は朝掘りと呼ぶ道の駅
夏:五月、走梅雨、神輿、蚯蚓( ) 、植田
2017.4
読みふけて五月の朝の寝ぎたなく
見過ごせし寺の縁起や走り梅雨

一年の憂さを蹴散らし荒神輿
蚯蚓出て梵字のごとく干涸びぬ
稲架
夏:柏餅、草茂る
2017.4
まだひとつ残る味噌餡柏餅父の忌や兄弟妹
何ひとつ建たず十年草茂る
一雨に天突く如く草茂る
夏:五月、夏めく、祭、夏蜜柑、筍。
2017.4
雲映る開かぬビル窓五月空夏めくや長きたそがれ時忘る
町の名を法被に誇る祭かな
はるかなるキャンパスの日々夏蜜柑
筍の旬に酌む酒竹の盃
夏:夜の秋、空蝉、夏終る。秋:秋暑し。
2016.9
夏から秋へ
退院の妻のうたた寝夜の秋いづれまたと言ひあひ喜寿の夏終る
空蝉の縋る葉吹かれまた吹かれ
秋暑し机上に残るかもめーる
夏:百合、炎昼、雹、灼く。
2016.7
<妣十三回忌法要>
僧と誦
炎昼や朱色気怠き中華街

炎昼の街若人の長き脚
雹去りて話戻りぬ傘同士
土灼くや球児一振り左中間
夏:炎天、夏夕、網戸、夏草、はまなす。
2016.6
炎天に短き影の重さかな慣るるまで居酒屋暗し夏夕べ

夕されば往時茫々網戸越し
夏草や地球の裏の聖火燃ゆ

はまなすや啄木泣きし浜に入る
夏:打水、カンナ。
2016.6
水打てる老舗の街の静けさよ天に聳
カンナ燃ゆ残りわづかな赤ワイン

滴雨
夏:梅雨入り、梅雨夕焼、梅雨明。
2016.6
梅雨入や血管探る針の憂し<妣十三回忌に兄弟妹寄り合ひて>
十階の兄弟妹青雲を突き刺すクレーン梅雨明くる
夏:梅雨晴間、薫風、梅雨雲
2016.6
中野区新井の哲学堂公園にて
梅雨晴間十七文字の小宇宙哲学を避け薫風を賞
梅雨雲や連なる碑碣
夏:梅雨晴間、梅雨明。
2016.6
淋しさに慣れて来し日の梅雨晴間
また変はる雲の形や梅雨明くる
夏:初夏。
2016.5
ジンロックけふを労
海鞘
夏:余花、青田、杉落葉。
2016.4
酒徒となる懐旧の宴余花明り

(推敲前) 飲み飽いて昔馴染みや余花明り
来し方を忘るる広き青田かな
笑ふこと減りし喜寿なり杉落葉


夏:梔子( の花、夏始。
2016.5
庭草履借り梔子の香に寄りぬ
疾き雲よ梔子の香を知らざるや
帽子はと訊かれて戻る夏はじめ
夏:蕗、釣堀。
2016.4
寺々の境に蕗の生ひきそふ
秋田蕗妻に初めて聞く話
釣堀の鮒は隣を好むらし

釣堀の暇な左手灰煙草
夏:日盛、夏座敷、虹。
2015.7~8
日盛や話途切れて港町猫の知る風の道あり夏座敷

虹の尾の消えし端山の夕明り
夏:冷奴、冷麦、夏雲、熱帯夜、霊送り。
2015.6~7
二言なし今日は一杯冷奴
冷麦でよきかと問はれ良しといふ

夏雲に心あるらし風少し
五十五年前頽
ひそやかに寄り合ふ心霊送り
夏:白雨、夏祭、夏草。
2015.6~8
<盛岡市岩山の「啄木詩の道」で>
ふるさとを望む啄木像白雨夏祭妻もみちのく育ちなる
夏草を乗せて寺門の屋根高き
酷暑の中の鬼城研究会俳趣散策
前の句に汗滲みをり俳句帖ハンカチや今日の汚れを今拭ふ
夏:夏至、鬼灯市、青嵐、梅雨出水、日盛。
2015.6
沖縄の焼き尽くされし夏至がまたいくたびか人見失ふ鬼灯
青嵐老いて口つく応援歌
流れゆくものみな大き梅雨出水
なに在りし街か日盛る津浪跡

夏:天道虫( 、芙蓉。
2015.6
七つ星良き名を得たり天道虫
手渡せば背を割るそぶり天道虫
輝ける生命はひと日酔芙蓉

咲き初む芙蓉に朝の風にくし
夏:祭、神輿。
2015.6
東京台東区の鳥越神社大祭
其処此処に法被車座祭酒千貫の神輿を押すや荒き息
夏:滝音、花茨、短夜。
2015.5
滝音に消さるる声に相槌す
河原への道を塞ぎて花茨
「拝復」のあとは思案の短夜
夏:薄暑、冷奴、浴衣。
2015.5
子ら去りぬ小公園の夕薄暑風湿る一人の夜の冷奴
級友の変らぬ仕種宿浴衣
夏:青嵐、さくらんぼ。
2015.5
青嵐上野にロダン逞しく
神社前てふバス停や青嵐
自転車の子に容赦なき青嵐
子に頒けて三粒残りしさくらんぼ
夏:松落葉、若葉風、夏曉。
2015.4
木洩れ日の遊ぶ朽ち椅子松落葉朝風呂の木桶の響若葉風
夏暁
夏:茄子苗、夏帽子。
2015.4
実ひとつ付く茄子苗も買ひにけり
茄子苗に余地は四五本狭庭
夏帽子とりて無住寺由緒書

あの人と知れるいつもの夏帽子
夏:驟雨、冷し酒。 秋:いわし雲
2014.8
驟雨止むや皆黄のコート下校の子暖簾吹く風ゆるき夜の冷し酒
友の死や拡がり崩るいわし雲
夏:浴衣、緑陰、汗
2014.6-7
息荒き男鹿の太鼓や宿浴衣

緑陰の切れて牛舎に時計立つ
梅雨晴間の湯島聖堂にて
小人の汗拭ひゐる孔子廟
夏:蟻、夏風、夏薊
2014.6
蟻われを噛みて命を落としけり夏風の霊
他の草を制し墓守
夏:夏座敷、虹、夏燕、夏館、蝸牛
2014.6
捨つべきを捨ててやうやく夏座敷
降り立てば二重
二番子は声嗄れるまで夏燕

今年また人気
蝸牛
夏:雲海。 秋:西瓜
2014.6
雲海を突きて真中に朝の富士
雲海の隠すうつつよ夕べには
いくたびか西瓜回してこの一刀

西日さす店に戻りて西瓜買ふ
夏:夏衣( 、額の花
2014.5
三回忌みちのく人の夏衣朝の雨乗せて礼する額の花
夏:更衣、初鰹、夏、青山椒
2014.4
老いてふたり気持新たに更衣
職退けば恥ぢず派手めの更衣
気どらずにたつぷり生姜初鰹

茶届くや新しき夏来たるらし
青山椒片手にわづか余るほど
夏:夏場所、雨蛙
2014.4
夏場所やゆつさゆつさと勝力士
夏場所や花道戻る背の光る
昼の日の暗みて歓呼雨蛙

いま鳴くはお前か小さき雨蛙
夏:蟻、汗、百日紅
2013.8
骨撮す日の蟻鈍傷痕をほめられ汗の松葉杖
百日紅癒えなば何處に赴かむ
夏:雲の峰、夏夕( 、梅雨、西瓜
2013.7
大勢の子神ひそみて雲の峰
いさかふも子らの遊びぞ夏夕
転寝

買うてすぐ割るには惜しや初西瓜


夏:結夏( 、夏見舞、原爆忌
2013.7
越前の結夏の寺の木霊かな我病むと小さく添へて夏見舞
放射線照射始めし原爆忌
夏:水中花
2013.07
水中花昔の夢のごと開く
水中花をつつみし水の美しさ
夏:梅雨明け、螢、滴り、夏の月、早桃(
2013.7
背の高き雲背伸びして梅雨明くる
宙に会ひ命またたく螢かな
杉暗き滴りの壁立石寺
義母忌日寺屋根光る夏の月
しばらくは供へて置かむ早桃かな

夏:馬鈴薯の花、風鈴、薄暑
2013.6
庭にあれば馬鈴薯の花いとほしき

風鈴よ地震

寝そべれば畳の香り薄暑かな
夏:若葉、夏衣
2013.5
昏れてなほ欅明るき若葉道
怖々

夏:夏めく、夏燈( 、サングラス、祭、夏書(
2013.4
夏めくや雲の姿のゆたかなる夏燈恋とは言へぬこひ語る
人がやや避くるかと見ゆサングラス

あやかりて少し薬缶の祭酒
筆ペンの般若心経夏書かな

夏:薄暑、短夜
2013.4
土の手を洗ふしぶきや夕薄暑
忘れしを忘るる日なり薄暑かな
短夜やはらから語り尽くるなし
明易や惑ひしままに夢の果て
夏:あぶら蝉、雲の峰、残暑、炎帝
2012.8
あぶら蝉さうざうしくもなつかしき雲の峰やうやう遂げし逆上り
酷使せし五臓に礼を言ふ残暑
みちのくも炎帝の攻め免れず
夏:桜桃忌、昼寝覚、鯵、冷奴、夏帽
2012.7
武蔵野は薄墨の雲桜桃忌
幼名

注文を替へて生簀の鯵とゐる
結局はそれで結構冷奴
夏帽の中を拭ひて池之端
夏:金魚
2012.7
はしつこにゐて難逃る金魚かな藻を潜り金魚逆立ち宙返り
夏:夏鶯、心太( 、蓮
2012.7
鳴き誇る夏鶯や早目覚酢の強き心太おくゴルフ茶屋
ひかへめに浄土の色を大賀蓮
夏:植田、青田、牡丹、蟻
2012.4~5
いささかの風に植田の頼りなき大青田伊達は六十二万石

静夜かな牡丹に炎あるごとし
習ひたるやうに墓苑の蟻の道
日に乾く蚯蚓を引きて蟻の汗
夏:大暑、祭、冷し酒、蝉時雨、秋:秋刀魚
2011.8
俳誌『櫻草』復刊20周年に当たり私の好きな鬼城の句に「冬蜂の死にどころなく歩きけり」を選びて、また「念力のゆるめば死ぬる大暑かな」をも踏へて
「冬蜂」を好む句に選る大暑かなみちのくの祭に軽
真向ひに見なれぬ客や冷し酒
労
目黒路は秋刀魚の煙俄か寄席
夏:薄暑、黴、青葉、十薬、水馬(
2011.6
主逝きし庭の青葉のほしいまま
寄りそひし兎も離る薄暑かな
雨もよし黴香の書など改めむ
十薬を美しと見き病み居れば
釣堀の眠き水面の水馬
寄りそひし兎も離る薄暑かな

雨もよし黴香の書など改めむ
十薬を美しと見き病み居れば
釣堀の眠き水面の水馬
夏:夏の夢、日傘、
2011.5
突然の独逸( 語試験夏の夢 
絵日傘を傾げて長き立話
ゆつくりと産院の前日傘過ぐ

絵日傘を傾げて長き立話
ゆつくりと産院の前日傘過ぐ
夏:余花、蛍、短夜、桐の花
2011.5
法名碑に母の名加ふ余花曇
この街は蛍を追ひし田圃にて
明滅の代る代るに恋螢
短夜や硝子戸叩き猫帰る
桐咲けば娘の歳を問はればや
この街は蛍を追ひし田圃にて

明滅の代る代るに恋螢
短夜や硝子戸叩き猫帰る
桐咲けば娘の歳を問はればや

夏:立葵、夏燈( 、大暑、冷酒
2010.8
黒雲を怖れず高き立葵
夏燈従兄弟( 再従兄弟( の集ひし日
行く道の光犇( く大暑かな
旅終へぬ酒冷えをれば妻も飲む
夏燈従兄弟
行く道の光犇
旅終へぬ酒冷えをれば妻も飲む
夏:夾竹桃、秋:星今宵
2010.8
広島原爆投下記念日,65周年
鎮魂の朝に真白き夾竹桃星今宵笹には重き願ひごと

夏:夏燕、端居(
2010.7
鍵型の路地を難なく夏燕
暮れなづむ路に一閃夏燕
休酒日と決めて長びく夕端居
知恵なくも世の中憂ふ端居かな
夏:蟻の道、立葵、夏至
2010.6
蟻の道何処に続く墓苑かな立葵背筋伸びたる父なりき
夏至のころ沖縄は死に終りけり
夏:卯浪、馬鈴薯、今年竹
2010.05
観光船傾け逃ぐる卯浪かな
馬鈴薯( の花うす紫の闇に消ゆ
今年竹軒に届きて切られけり
馬鈴薯
今年竹軒に届きて切られけり
夏:古茶新茶、子供の日、石楠花、杜若( 、祭
2010.5
古茶新茶老いてまた聞く未完成
大丈夫補助輪はづすこどもの日

石楠花に隠れて神札所
はなびらの揺れて揺るがぬ杜若
早々と祭衣装の朝餉かな
綿菓子の列の長さや町祭
神様はいづこにおはす町祭
夏:夏見舞、冷奴、遠花火、夾竹桃
2009.8
ひと組の客去り夕立止みにけり訥々と語る来し道冷奴
気懸りな検査前夜の遠花火
重き荷や白さへも憂し夾竹桃
独居や幾度も立ちて遠花火
夏:夕立、夏痩、雲の峰
2009.8
無罪得し友にまづ書く夏見舞夏痩せてことば優しくなりにけり
北空に父母の御霊や雲の峰
夏:今年竹、蓮、汗
2009.7
今年竹恐れず天を突きにけり人影に声ひそむるや朝の蓮
万歩計満足ならず汗拭ふ

夏:菊挿す、紫陽花
2009.7
紫陽花に隠れし厨二八そば
花色を忘れしままに菊を挿す

夏:合歓、新樹蔭、青葉、夏痩
2009.6
合歓眠る朝来し道を戻りけり狛犬の鼻くづれをり新樹蔭
青葉風古き椅子置く停留所
夏痩せて腕には大き時計かな
夏:花火、蓮
2009.6~7
花火見の心許なき下駄の音
手花火や及び腰なる小さな手
生きぬきし種子の硬さや大賀蓮
夏:更衣( 、走り梅雨、不如帰
2009.5~6
いつもやや人に遅れて更衣青白き腕を撫しつつ更衣
保津川に舟待つ窓や走り梅雨
不如帰啼いて企み省みず
夏:浴衣、立葵、蝉、夏盛ん
2008.8
紅させばそれにて佳人花浴衣ただいまと言へど主なき立葵
日昇りて乾かぬ翅の蝉動く
ありたけの雲を重ねて夏盛る
夏:馬鈴薯の花、雲の峰、撒水車、合歓の花
2008.7
馬鈴薯のうす紫に道暮るる争ひし故忘れゐて雲の峰
七色の飛沫

空襲を告げしサイレン合歓の花
夏:蜩、雷
2008.7
蜩や応援の声なほ高く
転寝
雷恐る卒壽の母の照れ笑ひ
夏:梅雨入り、鬼灯( 、夏書( 、立葵、籐椅子
2008.5~6
いろいろなものまとひつき梅雨に入る鬼灯のふたつ赤むを買ひてきし
半年の無沙汰の筆の夏書かな
父が植ゑ母も好みし立葵
籐椅子の軋みて父の十年忌
夏:桐の花、緑、遊船、粽
2008.5
<京都にて>
保津川の飛沫
化野
遊船や源氏物語千年紀
千年紀源氏の庭の早桔梗
粽解く紐の長さや古鞄
夏:夾竹桃、暑さ、はまなす、花火、かなぶん
2007.8
夾竹桃もう一杯の水が欲し
垂るる穂の毫も動かぬ暑さかな
啄木の墓はまなすの残り花
花火果つ宴の声のなほ高く
空席の増えし列車や遠花火
かなぶんの転がりてあり手水鉢
夏:心太( 、合歓( の花、夾竹桃
2007.7
尻つぽ切り箸を逃げたり心太
幼児の箸には難し心太
雲淡し羽後の車窓に合歓の花
夾竹桃雲の輪郭確かなり
夏:明易( 、扇風機、日盛(
2007.7
明易や裾に雲置く南部富士独り居に何問ひかくる扇風機
日盛や汝の短き影を踏む
夏:夏館、夏座敷、昼寝
2007.7
猫のやうに通り抜けたし夏館雨あがる蔦の窓開く夏館
夏館ふくらむ雲の濃さ淡さ
夏座敷敷居の上に猫眠る
早々に猫の昼寝の場所決まる
夏:青柿、柿若葉、驟雨、薔薇
2007.6
青柿の落つや職退く時と知る
伐りし木に冠のごと柿若葉
驟雨きて僧足早に永平寺
白髪の抱ふる薔薇や深夜バス
夏:カーネーション、鯰、新樹
2007.5
カーネーション赤を選びぬ百カ日針呑みてなほ悠悠と鯰かな
新樹光坐禅案内の墨新た
夏:五月尽、青梅
2007.5
新人の声落着きぬ五月尽青梅の三つほども落ち落着かず
夏:夏の波、梅雨、夏の海、水すまし、蓮
2006.7~8
流木や千里連なる夏の波
職退きて親しむ水絵梅雨もよし

夏の波ささめ言して去りにけり
少年の吾にふと会ふ夏の海
水すまし何年ぶりの出会ひかな
木道や花まで遠き大賀蓮
夏:山椒、郭公、夏草
2006.7
郭公の声やみ貨物列車来る
夏草を除けて確かむ歌碑の陰

噴水を遠囲みする水草
ビル風や団扇配りは朱を着て
夏:硯洗ひ、梅干
2006.6
硯洗ふ小筆の穂先検硯洗ふ去年の願ひをまた書かむ
梅干すやすずめ筵をめぐるのみ
梅干すや三和土
夏:夏めく、祭、蜥蜴( 、どくだみ、青田
2006.5
夏めくや山椒味噌を添ふ朝餉
降り立てばすでに祭のなかにをり
古祠幕張るのみの祭かな

羊歯
どくだみを残し十字の白を愛づ
田植機の千往復の青田かな
近詠 | 春季 | 夏季 |
秋季 | 冬季 | 新年 |

Last Update:2024.2.14。
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