ひとり句会-夏季 如雨
「近詠」掲載からほぼ3年以上経過した句を季別に整理しました。

  如雨と而酔のページサブノートひとり句会近詠>季別-夏季

夏    季


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夏:百日紅、端居、夜の秋、胡瓜

2020.7

まづ健康父の口癖百日紅
句仲間は遠く酒友もなく端居  
人ひとり過ぐる息差し夜の秋
棘強き胡瓜をほめて洗ひけり

夏:梅雨晴間、炎昼、夏萩、風鈴、浴衣

2020.6

怠りの日月なれど梅雨晴間
炎昼や千木(ちぎ)も神樹も動かざる
夏萩や父母の忌未だ修せざる
幾春秋寂びたる里の鉄風鈴
行きどまり返す畦道浴衣の子

夏:夏座敷、青野、日傘、五月、「静」

2020.5

静寂が先客のごと夏座敷  
真ふたつに青野を分けて鉄路かな  
日傘たたむ深きお辞儀の喪服かな
ふるさとは遠し自粛の五月なる

夏:立夏、夏の雨、木下闇、葉桜、七変化

2020.4

厄除け風鈴 強ひられし街の静寂夏に入る
休業の貼紙古書肆夏の雨
不要不急俯き歩む木下闇
訊ねまじ疾うに葉桜家籠
この年はなに色にせむ七変化

夏:梅雨寒、焼酎。 秋:星月夜

2019.7

啄木碑銀座梅雨寒傘滴(かさしづく)
焼酎の氷縮みて闇静か
医者勧む焼酎も酌む傘寿かな
星月夜そぞろ歩きのわらべ唄

夏:梅雨諸題、夏の雨

2019.6

梅雨寒しひとりホテルのバイキング
検査値は経過様子見梅雨の星
梅雨晴間話長引く犬自慢
所在なく捲る地図帳梅雨明くる
崩さるる山に溝掘る夏の雨

夏:枇杷、万緑

2019.6

椋鳥の去れば無慈悲な枇杷の疵  
万緑の例外ならず休耕地

夏:新緑、釣忍(つりしのぶ)

2019.5

新緑の枝伐る咎の一ト日暮る  
町筋の喧噪吸うて釣忍  

夏:余花、杜若(かきつばた)、たかんな、筍・蕗、青嵐

2019.4

杜若 余花残花ダウンロードの余命表
つぎ観るは八十路の老ぞ杜若
たかんなや鍬の刃痕の見事なる
盛り鉢に筍と蕗竹お猪口
ひと遅し松葉を運ぶ青嵐
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夏:空蝉、梅雨、溽暑、涼し。秋:芙蓉忌、

2018.7

空蝉といふ墓遺し魂何処 
梅雨夕焼欄干に倚る湯宿下駄
いささかの風のあざむく溽暑かな 
せせらぎに恋歌涼し広瀬川
鳶舞ふや芙蓉忌の空あらたまる

芙蓉忌は村上鬼城の忌日9月17日。鬼城忌、靑萍忌。

夏:晩夏光、万緑、明易し、涼し、薔薇園。

2018.6

鏡中の老斑(しみ)(がへん)ず晩夏光
万緑や終楽章のフォルテシモ
明易やまつさらな日の始まりぬ
洞窟に卒塔婆涼し瑞巌寺

  <神代植物公園>

薔薇園の淡き香うばふ通り雨

夏:夏帽子、青葉。

2018.6

鍵抜きてこれより自由夏帽子 

  <女子小学生が殺害され線路に遺棄との報に>

青葉(くら)し錆浮く越後鉄路柵

夏:浴衣、祭笛、夏燈、風鈴、夏柳

2018.6

膳に着く子のぎこちなき宿浴衣
灯ともりて少し(かす)れし祭笛
夏燈尻取り歌の続く家

  <古い南部鉄の風鈴、大震災の日にはなお(かまびす)しい>

鉄風鈴音の昂ぶる十一日
この角を折れて菩提寺夏柳

夏:喜雨、桐一葉。

2018.6

一廻りせずばと勇む喜雨兆す
喜雨の音幾度か立ちてたしかむる
たましひといふ語反芻桐一葉 
雨ながら明るき影や桐一葉

夏:緑雨、花水木、夏の雨、青嵐。

2018.5

透きとほる風引きつれて緑雨かな 
塾終へし子に薄明り花水木
お辞儀して急ぐ下校子夏の雨
面倒なことを蹴散らし青嵐 

夏:新樹、山法師の花。

2018.5

御霊ふたつ新樹の雨に眠りけり 
雨烟ぶる啄木の村山法師 

夏:夏に入る、緑雨、父の日、梅雨晴間、梅雨明け

2018.4

要治療てふ所見また夏に入る
山の香を包みて落つる緑雨かな
父の日のビール大缶プレミアム
太き腕シャツに筆文字梅雨晴間
梅雨明けや草の絡みし水位標

夏:新緑、五月闇。

2018.4

木の株を借り新緑の香をまとふ  
新緑を突きてクルスの塔高し
別れ来て友の訃に堪ふ五月闇  
子の声の去りて校庭五月闇

夏:新緑、夏めく、山背、鯉幟、夏帽子。

2018.4

見はるかす新緑大地やはらかし
夏めくや都心の夜を歩きたし
山背寒む竿に重たき体操着
身を寄せて遊ぶ風待つ鯉幟
あの津波まで知らぬ町夏帽子
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夏:夕焼(ゆやけ)、炎暑、盛夏。

2017.7

それぞれの形の夕焼(にはたづみ) 
どの影も身を縮め行く炎暑かな
地震(なゐ)跡に雲も遊ばぬ盛夏かな

夏:夾竹桃、老鴬、暮なづむ、夏の雨、梅雨晴。

2017.6

さゆらぎて日のなすままに夾竹桃

  <仙台・伊達霊廟瑞鳳殿>

木漏れ日や老鶯近き瑞鳳殿
暮れ落ちてはためき止まぬ氷旗
下校子の辞儀する肩に夏の雨
梅雨晴や投句帰りの回り道

夏:暑さ、百日紅、夏祭

2017.6

厳めしき山も寝そべる暑さかな 
忘れたきこといつ迄も百日紅(ひやくじつこう)
子らと居て子にもどる夜夏祭

夏:夏の雨、夏うぐひす、郭公、夏薊、夏草

2017.6

土の香を思ひ出に変へ夏の雨 
閑けさや気遣ひの声夏うぐひす
郭公の近き渋民啄木碑
供物などなき野仏に夏薊 
夏草や一輌の汽車偶さかに

夏:片陰、病葉。秋:新涼。

2017.5~6

去年より大き片陰丸の内 
わくら葉や病むとも見えずかくれ蓑
病葉や緑残して吹かれけり
新涼や朝の珈琲香のゆたか
新涼の風抜ける道社殿裏

夏:五月、筍

2017.5

五月号買うて甲斐なき基礎講座 
一年生校歌確かめ合ふ五月 
筍は朝掘りと呼ぶ道の駅

夏:五月、走梅雨、神輿、蚯蚓(みみづ)、植田

2017.4

読みふけて五月の朝の寝ぎたなく 
見過ごせし寺の縁起や走り梅雨 
一年の憂さを蹴散らし荒神輿
蚯蚓出て梵字のごとく干涸びぬ
稲架(はざ)となる木々を映して植田かな

夏:柏餅、草茂る

2017.4

まだひとつ残る味噌餡柏餅
父の忌や兄弟妹(はらから)寄りて柏餅
何ひとつ建たず十年草茂る
一雨に天突く如く草茂る

夏:五月、夏めく、祭、夏蜜柑、筍。

2017.4

雲映る開かぬビル窓五月空
夏めくや長きたそがれ時忘る
町の名を法被に誇る祭かな
はるかなるキャンパスの日々夏蜜柑
筍の旬に酌む酒竹の盃
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夏:夜の秋、空蝉、夏終る。秋:秋暑し。

2016.9

  夏から秋へ

退院の妻のうたた寝夜の秋
いづれまたと言ひあひ喜寿の夏終る
空蝉の縋る葉吹かれまた吹かれ
秋暑し机上に残るかもめーる

夏:百合、炎昼、雹、灼く。

2016.7

 <妣十三回忌法要>

僧と()修証義(しゅしょうぎ)五章供華(くげ)に百合 
炎昼や朱色気怠き中華街 
炎昼の街若人の長き脚
雹去りて話戻りぬ傘同士
土灼くや球児一振り左中間

夏:炎天、夏夕、網戸、夏草、はまなす。

2016.6

炎天に短き影の重さかな
慣るるまで居酒屋暗し夏夕べ 
夕されば往時茫々網戸越し
夏草や地球の裏の聖火燃ゆ 
はまなすや啄木泣きし浜に入る

夏:打水、カンナ。

2016.6

水打てる老舗の街の静けさよ
天に()つ雲を(たの)まず水を打つ
カンナ燃ゆ残りわづかな赤ワイン 

滴雨(しづくあめ)奥に残してカンナ燃ゆ

夏:梅雨入り、梅雨夕焼、梅雨明。

2016.6

梅雨入や血管探る針の憂し

 <妣十三回忌に兄弟妹寄り合ひて>

十階の兄弟妹(はらから)の卓梅雨夕焼
青雲を突き刺すクレーン梅雨明くる

夏:梅雨晴間、薫風、梅雨雲

2016.6

  中野区新井の哲学堂公園にて

梅雨晴間十七文字の小宇宙
哲学を避け薫風を()づ無学
梅雨雲や連なる碑碣(ひけつ)語の重し

夏:梅雨晴間、梅雨明。

2016.6

淋しさに慣れて来し日の梅雨晴間 
また変はる雲の形や梅雨明くる

夏:初夏。

2016.5

ジンロックけふを(ねぎら)ふ初夏の音 
海鞘(ほや)裂けば三陸の初夏匂ひけり

夏:余花、青田、杉落葉。

2016.4

酒徒となる懐旧の宴余花明り 

     (推敲前) 飲み飽いて昔馴染みや余花明り

来し方を忘るる広き青田かな 
笑ふこと減りし喜寿なり杉落葉 

夏:梔子(くちなし)の花、夏始。

2016.5

庭草履借り梔子の香に寄りぬ 
疾き雲よ梔子の香を知らざるや
帽子はと訊かれて戻る夏はじめ

夏:蕗、釣堀。

2016.4

寺々の境に蕗の生ひきそふ 
秋田蕗妻に初めて聞く話
釣堀の鮒は隣を好むらし 

釣堀の暇な左手灰煙草
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夏:日盛、夏座敷、虹。

2015.7~8

日盛や話途切れて港町
猫の知る風の道あり夏座敷 
虹の尾の消えし端山の夕明り

夏:冷奴、冷麦、夏雲、熱帯夜、霊送り。

2015.6~7

二言なし今日は一杯冷奴 
冷麦でよきかと問はれ良しといふ 
夏雲に心あるらし風少し
五十五年前(くづほ)れし夢熱帯夜
ひそやかに寄り合ふ心霊送り

夏:白雨、夏祭、夏草。

2015.6~8

 <盛岡市岩山の「啄木詩の道」で>

ふるさとを望む啄木像白雨

啄木像はここをクリック

夏祭妻もみちのく育ちなる
夏草を乗せて寺門の屋根高き

  酷暑の中の鬼城研究会俳趣散策

前の句に汗滲みをり俳句帖
ハンカチや今日の汚れを今拭ふ

夏:夏至、鬼灯市、青嵐、梅雨出水、日盛。

2015.6

沖縄の焼き尽くされし夏至がまた
いくたびか人見失ふ鬼灯(ほほづき)
青嵐老いて口つく応援歌
流れゆくものみな大き梅雨出水
なに在りし街か日盛る津浪跡 

夏:天道虫(てんたうむし)、芙蓉。

2015.6

七つ星良き名を得たり天道虫 
手渡せば背を割るそぶり天道虫
輝ける生命はひと日酔芙蓉 
咲き初む芙蓉に朝の風にくし

夏:祭、神輿。

2015.6

  東京台東区の鳥越神社大祭

其処此処に法被車座祭酒
千貫の神輿を押すや荒き息

夏:滝音、花茨、短夜。

2015.5

滝音に消さるる声に相槌す 
河原への道を塞ぎて花茨
「拝復」のあとは思案の短夜(たんや)かな

夏:薄暑、冷奴、浴衣。

2015.5

子ら去りぬ小公園の夕薄暑
風湿る一人の夜の冷奴
級友の変らぬ仕種宿浴衣

夏:青嵐、さくらんぼ。

2015.5

青嵐上野にロダン逞しく 
神社前てふバス停や青嵐
自転車の子に容赦なき青嵐
子に頒けて三粒残りしさくらんぼ
△TOP

夏:松落葉、若葉風、夏曉。

2015.4

木洩れ日の遊ぶ朽ち椅子松落葉
朝風呂の木桶の響若葉風
夏暁(なつあけ)の竿に小さきユニフォーム

夏:茄子苗、夏帽子。

2015.4

実ひとつ付く茄子苗も買ひにけり 
茄子苗に余地は四五本狭庭(さには)かな

夏帽子とりて無住寺由緒書 
あの人と知れるいつもの夏帽子
△TOP

夏:驟雨、冷し酒。 秋:いわし雲

2014.8

驟雨止むや皆黄のコート下校の子
暖簾吹く風ゆるき夜の冷し酒
友の死や拡がり崩るいわし雲

夏:浴衣、緑陰、汗

2014.6-7

息荒き男鹿の太鼓や宿浴衣 
緑陰の切れて牛舎に時計立つ
 梅雨晴間の湯島聖堂にて
小人の汗拭ひゐる孔子廟

夏:蟻、夏風、夏薊

2014.6

蟻われを噛みて命を落としけり
夏風の(たまに等しく回向院
他の草を制し墓(る夏薊

夏:夏座敷、虹、夏燕、夏館、蝸牛

2014.6

捨つべきを捨ててやうやく夏座敷 
降り立てば二重(ふたへ)ビルの(あひ)
二番子は声嗄れるまで夏燕 
今年また人気(ひとけ)なきらし夏館
蝸牛(ででむし)になにも申さじ相似たる

夏:雲海。 秋:西瓜

2014.6

雲海を突きて真中に朝の富士 
雲海の隠すうつつよ夕べには
いくたびか西瓜回してこの一刀 
西日さす店に戻りて西瓜買ふ

夏:夏衣(なつごろも)、額の花

2014.5

三回忌みちのく人の夏衣
朝の雨乗せて礼する額の花

夏:更衣、初鰹、夏、青山椒

2014.4

老いてふたり気持新たに更衣 
職退けば恥ぢず派手めの更衣
気どらずにたつぷり生姜初鰹 
茶届くや新しき夏来たるらし
青山椒片手にわづか余るほど

夏:夏場所、雨蛙

2014.4

夏場所やゆつさゆつさと勝力士 
夏場所や花道戻る背の光る
昼の日の暗みて歓呼雨蛙 
いま鳴くはお前か小さき雨蛙


夏:蟻、汗、百日紅

2013.8

骨撮す日の蟻(のろ)し杖の先
傷痕をほめられ汗の松葉杖
百日紅癒えなば何處に赴かむ

夏:雲の峰、夏夕(なつゆふべ)、梅雨、西瓜

2013.7

大勢の子神ひそみて雲の峰 
いさかふも子らの遊びぞ夏夕
転寝(うたたね)の傘倒れ来る梅雨の駅 
買うてすぐ割るには惜しや初西瓜 

夏:結夏(けつげ)、夏見舞、原爆忌

2013.7

越前の結夏の寺の木霊かな
我病むと小さく添へて夏見舞
放射線照射始めし原爆忌

夏:水中花

2013.07

水中花昔の夢のごと開く 
水中花をつつみし水の美しさ

夏:梅雨明け、螢、滴り、夏の月、早桃(さもも)

2013.7

背の高き雲背伸びして梅雨明くる 
宙に会ひ命またたく螢かな
杉暗き滴りの壁立石寺
義母忌日寺屋根光る夏の月
しばらくは供へて置かむ早桃かな 

夏:馬鈴薯の花、風鈴、薄暑

2013.6

庭にあれば馬鈴薯の花いとほしき 
風鈴よ地震(なゐ)に揺るるな風に鳴れ 
寝そべれば畳の香り薄暑かな

夏:若葉、夏衣

2013.5

昏れてなほ欅明るき若葉道 
怖々(おづおづ)と東尋坊の夏衣 

夏:夏めく、夏燈(なつともし)、サングラス、祭、夏書(げがき)

2013.4

夏めくや雲の姿のゆたかなる
夏燈恋とは言へぬこひ語る
人がやや避くるかと見ゆサングラス 
あやかりて少し薬缶の祭酒
筆ペンの般若心経夏書かな 

夏:薄暑、短夜

2013.4

土の手を洗ふしぶきや夕薄暑 
忘れしを忘るる日なり薄暑かな
短夜やはらから語り尽くるなし
明易や惑ひしままに夢の果て

夏:あぶら蝉、雲の峰、残暑、炎帝

2012.8

あぶら蝉さうざうしくもなつかしき
雲の峰やうやう遂げし逆上り
酷使せし五臓に礼を言ふ残暑
みちのくも炎帝の攻め免れず


夏:桜桃忌、昼寝覚、鯵、冷奴、夏帽

2012.7

武蔵野は薄墨の雲桜桃忌 
幼名(おさなな)で呼ばれしは夢昼寝覚 
注文を替へて生簀の鯵とゐる
結局はそれで結構冷奴
夏帽の中を拭ひて池之端

夏:金魚

2012.7

はしつこにゐて難逃る金魚かな
藻を潜り金魚逆立ち宙返り

夏:夏鶯、心太(ところてん)、蓮

2012.7

鳴き誇る夏鶯や早目覚
酢の強き心太おくゴルフ茶屋
ひかへめに浄土の色を大賀

夏:植田、青田、牡丹、蟻

2012.4~5

いささかの風に植田の頼りなき
大青田伊達は六十二万石 
静夜かな牡丹に炎あるごとし
習ひたるやうに墓苑の蟻の道
日に乾く蚯蚓を引きて蟻の汗


夏:大暑、祭、冷し酒、蝉時雨、秋:秋刀魚

2011.8

俳誌『櫻草』復刊20周年に当たり私の好きな鬼城の句に「冬蜂の死にどころなく歩きけり」を選びて、また「念力のゆるめば死ぬる大暑かな」をも踏へて

「冬蜂」を好む句に選る大暑かな
みちのくの祭に(かろ)き旅鞄
真向ひに見なれぬ客や冷し酒
(ねぎら)はることなき務め蝉しぐれ
目黒路は秋刀魚の煙俄か寄席

夏:薄暑、黴、青葉、十薬、水馬(みずすまし)

2011.6

主逝きし庭の青葉のほしいまま
寄りそひし兎も離る薄暑かな 
雨もよし黴香の書など改めむ
十薬を美しと見き病み居れば
釣堀の眠き水面の水馬

夏:夏の夢、日傘、

2011.5

突然の独逸(ドイツ)語試験夏の夢 
絵日傘を傾げて長き立話
ゆつくりと産院の前日傘過ぐ

夏:余花、蛍、短夜、桐の花

2011.5

法名碑に母の名加ふ余花曇
この街は蛍を追ひし田圃にて 
明滅の代る代るに恋螢
短夜や硝子戸叩き猫帰る
桐咲けば娘の歳を問はればや 


夏:立葵、夏燈(なつともし)、大暑、冷酒

2010.8

黒雲を怖れず高き立葵
夏燈従兄弟(いとこ)再従兄弟(はとこ)の集ひし日
行く道の光(うごめ)く大暑かな
旅終へぬ酒冷えをれば妻も飲

夏:夾竹桃、秋:星今宵

2010.8

 広島原爆投下記念日,65周年

鎮魂の朝に真白き夾竹桃

星今宵笹には重き願ひごと 

夏:夏燕、端居(はしゐ)

2010.7

鍵型の路地を難なく夏燕 
暮れなづむ路に一閃夏燕
休酒日と決めて長びく夕端居
知恵なくも世の中憂ふ端居か

夏:蟻の道、立葵、夏至

2010.6

蟻の道何処に続く墓苑かな
立葵背筋伸びたる父なりき
夏至のころ沖縄は死に終りけり

夏:卯浪、馬鈴薯、今年竹

2010.05

観光船傾け逃ぐる卯浪かな
馬鈴薯(いも)の花うす紫の闇に消ゆ
今年竹軒に届きて切られけり

夏:古茶新茶、子供の日、石楠花、杜若(かきつばた)、祭

2010.5

古茶新茶老いてまた聞く未完成 
大丈夫補助輪はづすこどもの日 
石楠花に隠れて神札所(ふだしょ)巫女ひとり
はなびらの揺れて揺るがぬ杜若
早々と祭衣装の朝餉かな
綿菓子の列の長さや町祭
神様はいづこにおはす町祭


夏:夏見舞、冷奴、遠花火、夾竹桃

2009.8

ひと組の客去り夕立止みにけり
訥々と語る来し道冷奴
気懸りな検査前夜の遠花火
重き荷や白さへも憂し夾竹桃
独居や幾度も立ちて遠花火

夏:夕立、夏痩、雲の峰

2009.8

無罪得し友にまづ書く夏見舞
夏痩せてことば優しくなりにけり
北空に父母の御霊や雲の峰

夏:今年竹、蓮、汗

2009.7

今年竹恐れず天を突きにけり
人影に声ひそむるや朝の蓮
万歩計満足ならず汗拭ふ 

夏:菊挿す、紫陽花

2009.7

紫陽花に隠れし厨二八そば 
花色を忘れしままに菊を挿す 

夏:合歓、新樹蔭、青葉、夏痩

2009.6

合歓眠る朝来し道を戻りけり
狛犬の鼻くづれをり新樹蔭
青葉風古き椅子置く停留所
夏痩せて腕には大き時計かな

夏:花火、蓮

2009.6~7

花火見の心許なき下駄の音 
手花火や及び腰なる小さな手
生きぬきし種子の硬さや大賀蓮

夏:更衣(ころもがへ)、走り梅雨、不如帰

2009.5~6

いつもやや人に遅れて更衣
青白き腕を撫しつつ更衣
保津川に舟待つ窓や走り梅雨
不如帰啼いて企み省みず


夏:浴衣、立葵、蝉、夏盛ん

2008.8

紅させばそれにて佳人花浴衣
ただいまと言へど主なき立葵
日昇りて乾かぬ翅の蝉動く
ありたけの雲を重ねて夏盛る

夏:馬鈴薯の花、雲の峰、撒水車、合歓の花

2008.7

馬鈴薯のうす紫に道暮るる
争ひし故忘れゐて雲の峰
七色の飛沫(しぶき)従へ撒水車 
空襲を告げしサイレン合歓の花 

夏:蜩、雷

2008.7

蜩や応援の声なほ高く 
転寝(うたたね)や風の連れ来し遠ひぐらし
雷恐る卒壽の母の照れ笑ひ

夏:梅雨入り、鬼灯(ほほづき)夏書(げがき)、立葵、籐椅子

2008.5~6

いろいろなものまとひつき梅雨に入る
鬼灯のふたつ赤むを買ひてきし
半年の無沙汰の筆の夏書かな
父が植ゑ母も好みし立葵
籐椅子の軋みて父の十年忌

夏:桐の花、緑、遊船、粽

2008.5

 <京都にて>

保津川の飛沫(しぶき)に遠き桐の花 
化野(あだしの)の緑百色石仏
遊船や源氏物語千年紀
千年紀源氏の庭の早桔梗

粽解く紐の長さや古鞄 


夏:夾竹桃、暑さ、はまなす、花火、かなぶん

2007.8

夾竹桃もう一杯の水が欲し 
垂るる穂の毫も動かぬ暑さかな
啄木の墓はまなすの残り花
花火果つ宴の声のなほ高く
空席の増えし列車や遠花火
かなぶんの転がりてあり手水鉢

夏:心太(ところてん)合歓(ねむ)の花、夾竹桃

2007.7

尻つぽ切り箸を逃げたり心太 
幼児の箸には難し心太
雲淡し羽後の車窓に合歓の花
夾竹桃雲の輪郭確かなり

夏:明易(あけやす)、扇風機、日盛()

2007.7

明易や裾に雲置く南部富士
独り居に何問ひかくる扇風機
日盛や汝の短き影を踏む

夏:夏館、夏座敷、昼寝

2007.7

猫のやうに通り抜けたし夏館
雨あがる蔦の窓開く夏館
夏館ふくらむ雲の濃さ淡さ
夏座敷敷居の上に猫眠る
早々に猫の昼寝の場所決まる

夏:青柿、柿若葉、驟雨、薔薇

2007.6

青柿の落つや職退く時と知る 
伐りし木に冠のごと柿若葉
驟雨きて僧足早に永平寺
白髪の抱ふる薔薇や深夜バス

夏:カーネーション、鯰、新樹

2007.5

カーネーション赤を選びぬ百カ日
針呑みてなほ悠悠と鯰かな
新樹光坐禅案内の墨新た

夏:五月尽、青梅

2007.5

新人の声落着きぬ五月尽
青梅の三つほども落ち落着かず


夏:夏の波、梅雨、夏の海、水すまし、蓮

2006.7~8

流木や千里連なる夏の波 
職退きて親しむ水絵梅雨もよし 
夏の波ささめ言して去りにけり
少年の吾にふと会ふ夏の海
水すまし何年ぶりの出会ひかな
木道や花まで遠き大賀蓮

夏:山椒、郭公、夏草

2006.7

郭公の声やみ貨物列車来る 
夏草を除けて確かむ歌碑の(うら) 
噴水を遠囲みする水草(みぐさ)かな
ビル風や団扇配りは朱を着て

夏:硯洗ひ、梅干

2006.6

硯洗ふ小筆の穂先(あらた)めつ
硯洗ふ去年の願ひをまた書かむ
梅干すやすずめ筵をめぐるのみ
梅干すや三和土(たたき)に黒き汁の壷

夏:夏めく、祭、蜥蜴(とかげ)、どくだみ、青田

2006.5

夏めくや山椒味噌を添ふ朝餉 
降り立てばすでに祭のなかにをり
古祠幕張るのみの祭かな 
羊歯(しだ)に拠り小さき蜥蜴の驚かず
どくだみを残し十字の白を愛づ
田植機の千往復の青田かな

夏:篠の子(すずのこ)、黴

2006.4~5

篠の子の指したる天の広さかな 
篠の子を避けて荷をおく登山帽
篠の子のとんがり留守の椀にあり
上古(しょうこ)なる壁画の色を盗りし黴 
黴拭きぬ神秘の力採るごとく
去りし子や部屋にひとすじ黴歩く

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