秋:雨月、菊の香、蟷螂
2020.9
人偲ぶ時宜と思へり雨月かな
菊の香や老てふ世界未知と危懼
蟷螂の斧上ぐる先すでに星
秋:秋の風、うろこ雲、稲穂、夜長、今年酒
2020.8
水底に波の影なす秋の風またひとり遠くなりけりうろこ雲
夕風に揺らぎわづかや稲穂波
終バスの往きて夜長の水明り
戻り来よネオンの温み今年酒
秋:糸芒、秋出水、末枯野(
2019.10
岩風呂へ径の孤灯や糸芒
秋出水退いて泥の田雲奔る

容赦なく甚振

秋:秋立つ、秋暑し、虫時雨、鬼城忌、秋中日
2019.8
秋立つや朽ちてゆくもの稔るもの異季の句を捨てて戻して秋暑し
鳴き下手も臆せず集く虫時雨
英訳の句碑置く街や鬼城の忌
供花
秋:秋暑し、鰯雲、星月夜。
2019.8
蚊取りの香残る縁側秋暑し
またひとり遠方
星月夜そぞろ歩きのわらべ唄
秋:今朝の秋、秋雲
2019.8
今朝秋のおりんの長き余韻かな
秋雲や至上の涙準優勝
風なくも小花落ち初む今朝の秋
秋:菊の雨、秋の暮
2018.10
剪りをれば香りほのかや菊の雨
木々すでにくつろぎの色秋の暮
秋:秋の蝉、秋風、秋雨、秋の蝶
2018.8~9
鳴きとぎれ足もとに音秋の蝉杉木立すべて秋風中尊寺
秋雨や短きホーム父の郷

かすめ行く全き翅や秋の蝶
秋:木槿、盆、秋野、盆東風( 、稲の花
2018.8
酌み合うて木槿の転悪しき脚宥めつ盆の霊に供華
隧道に入りて単線秋野果つ
盆東風や隅まで匂ふ雨後の庭
声聞かぬ村に入りけり稲の花

秋:秋の蚊、鳥威。
2018.8
秋の蚊のよろめくと見せ刺しにけり止まらせて吸はれ秋の蚊打ち損ね
侮らることは承知の鳥威
鳥威今日の役終へ田の暮るる
秋:敗戦忌、鬼城忌、残る蝉、蟷螂、秋風。
2018.6
敗戦忌戦を知らぬ子のゲーム鬼城忌や秋咲く花も散る花も
鳶舞ふや芙蓉忌の空あらたまる
芙蓉忌は村上鬼城の忌日9月17日。鬼城忌、靑萍忌。
残る蝉日本の夏の長すぎて反り立ちて蟷螂の斧まだ青く
躓くは秋風のせい老ゆまじく
秋:秋雨、うろこ雲。
2018.8
秋雨や初めて暗し北の窓
旅せよと北に行くらしうろこ雲
秋:団栗。冬:冬の日、冬立つ。
2017.10
どんぐりを拾へばどんぐり踏みし音
野球帽ベンチに残り冬日没る
冬立つや猫背を正し歩を広く
秋:赤い羽根、木犀、秋時雨、花火。
2017.8~9
甲高き声に呼ばれて赤い羽根 
曲り角また木犀の香のなかに
秋時雨床に荷下ろす郷言葉( 
補聴器を着くれば近き花火かな
秋:霊送り、秋の風、吾亦紅、青瓢、今年酒
2017.8
居士大姉名を独り言ち魂送り老いの背を射るや撫づるや秋の風
ふと口に母に謝す歌吾亦紅
仏より下げて注
銚子から音はつらつと今年酒

秋:秋の暮、轡虫、花野、秋晴るる、秋色。
2017.8
差かかる厄介な坂秋の暮
本籍地覆ふ草叢くつわ虫
滅びまで夢をつなぎて花野かな
秋晴るる小さき空の丸の内
みちのくはすでに秋色稽古笛
夏:片陰、病葉。秋:新涼。
2017.5~6
去年より大き片陰丸の内

わくら葉や病むとも見えずかくれ蓑
病葉や緑残して吹かれけり
新涼や朝の珈琲香のゆたか
新涼の風抜ける道社殿裏
秋:爽やか、冷やか、冷まじ。
2016.10
爽やかや季語の感覚確かめる冷やかや強張る顔の歯科に入る

冷まじや猫餌あまた猫居らず

秋:秋日、いわし雲、秋蝶、草の香。
2016.10
秋日や僧小手かざす街の駅逢ふも駅別るるも駅いわし雲
秋蝶の窓のレースに影残し
<井田サロンにて>
草の香や鬼城遺墨の息衝秋:新酒、新走( り。
2016.10
新酒酌む五臓に感謝そして詫び


俳論の行方怪しき新走り


秋:敬老の日、夜長。
2016.9
しみじみと普通がよろし敬老日数独


秋:朝寒、秋彼岸、身に入(し) む、夜長、敬老日。
2016.8
うしろ手に思案装ひ朝寒し籠に入る犬も参るや秋彼岸

作句から1ト月ほど後の子規忌に、白に黒が混じる毛並のきれいなまま死にました。19歳半の長寿でした。
酒肆
敬老日齢は胸に閉ぢ込めて

秋:衣被( きぬかつぎ ) 、冬近し。
2016.8
しがらみもなにやら剥けて衣被不器用に生きて剥き下手衣被
<京都嵯峨野化野

響きくる庭師の鋏冬近し
秋:魂迎、墓参り、送火。
2016.8
魂迎へ焚火法度の町に住み戻りくる人みな会釈墓参り
送火や京都の闇の深みくる
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秋:秋深し、秋灯、文化の日、柿、八千草
2015.10
実家
句趣はいさ仮名を確かむ秋灯
読まぬ本はみ出す書架や文化の日

柿啜るほかに音なき雨夜かな
八千草に音を吸はせて夜の雨
秋:花芒、秋澄む、秋の暮
2015.10
振り向けば学びそびれて花芒
秋のひと日 日本橋に集ひて
秋澄むや髙利
註:<髙利>は「三越」創業の三井髙利
東京の人流れゆく秋の暮秋:水草紅葉、蕎麦の花。
2015.10
堀跡の水草紅葉夕明り夕明り丘ゆるやかに蕎麦の花
秋:秋暑し、無月、秋高し、敬老の日、秋草。
2015.8
物問へば短き答秋暑し無月らしきのふの月を惜しみけり

戦なき七十年の秋高し

是非もなし敬老の日の酒二合
風なくも乱るるがよし秋の草
秋:無月、秋燈(あきともし) 、末枯(うらがれ) 。
2015.8
ひと雨の往きて残りし風無月
漱石を読めば青春秋燈


末枯の庭をいたはる夜の雨

風はこぶ遠き晩鐘末枯れぬ
秋:降り月、新酒、秋灯(あきともし) 。
2015.8
空欄の多き手帳や降り月憂きことの新酒に混り酔ひはやし
塾の子の気になる窓の秋灯
秋:晩菊、野路の雨、紅葉、柿。冬:初時雨
2014.10
晩菊や老いを自慢の待合室
声かけてしばし道連れ野路の秋
窓にかかる紅葉でよろし雨湯宿
空に浮き今年も柿の熟るるまま
初時雨人驚かず市の街
秋:桃、山粧ふ、秋光、秋の雨、新蕎麦
2014.10
桃啜る些細な悩みある日記
装はぬ義母行けばこそ山粧ふ
世田谷の井田氏新邸を訪ね、鬼城の俳画を前に―
秋光や鬼城影を置く新邸仲見世や整然として秋の雨
樽酒の香や新蕎麦ざる二枚
秋:秋立つ、初紅葉、秋の声・秋声、うろこ雲
2014.8
みちのくにあれば合点の秋立ちぬ声かけてくる人知らず初紅葉

今日聞けば秋の声する貝の殻

秋声や父母の気配のあるやうで
滞りなく終りし葬儀うろこ雲
秋:うろこ雲、紅葉、菊
'13.10~11
友居りし下宿の窓のうろこ雲二冊目はもみぢ葉で終ふ朱印帳
秋:無月、暮の秋、菊
'13.10~11
明日を恃菊を焚く千切れ炎の香を生みて

不具合は不具合のまま暮の秋
川筋の細り魚見ぬ暮の秋
秋:後の月、芒原、暮の秋
'13.10
狭庭にも松の影おく後の月
芒原旋風
風音に草の色消す暮の秋

秋:秋めく、蜩
'13.8~9
汝と我一言でよし星月夜秋めくや忌明の膳の箸の音
蜩のとほきにありて近きごと
秋:生身魂 ( いきみたま )
'13.8
生身魂いただきましたと酒五勺

年齢訊かれ真顔になりぬ生身魂
秋:秋の日、露葎つゆむぐら 、紅葉山
2012.8
秋の日の腑抜けのやうに昏れにけり露葎裾しつぽりと子の帰る
京路地に傾き迫る紅葉山
秋:新蕎麦、とろろ汁、秋、一葉
2012.10
能書の多き新蕎麦頼みけり呆気なきひとり昼餉のとろろ汁
撫でられて光る牛像
昏れ初むる頬杖の窓一葉散る
秋:彼岸花、秋桜
2012.9
古き良き頃と言ひさし彼岸花秋桜の種子採る郷
秋:木槿垣むくげがき 、新酒、新蕎麦
2012.9
この穴は誰の近道木槿垣
教へらる山の名忘れ走り蕎麦

新潟の新酒と聞きて銘問はず

秋:桃、秋蜂、十六夜、星流る、西鶴忌
2012.8
退院日まづは安堵の桃啜る秋蜂ははたして悲し病み居れば
十六夜や今日から妻も老いはじむ
独り居や声なきうちに星流る
夕されど一句も成さず西鶴忌
秋:月、秋風
2012.8
我病むを上れる月に語りけり出湯宿月ある部屋に寄合ひて
そばに人あれと思ひぬ秋の風
秋風や太字の術後注意書
秋:盆踊
2012.8
一昨年初めての化粧
秋:紅葉、古酒新酒、新酒、今年酒、温め酒
2011.10
歳時記に栞りて褪せる京紅葉較べみてひとり頷く古酒新酒
我生れし震災の地の新酒かな
なみなみの盃
秋:曼珠沙華、温め酒、蕎麦の花、秋の空、小望月
2011.10
その色は何想ふらむ曼珠沙華牧水忌迷はず頼む温め酒
上州は穏やかな風蕎麦の花
白も青もやさしくなりて秋の空
走り書く句帖に明き小望月
秋:小夜嵐、虫の音、温め酒(ぬくめざけ) 、
2011.10
小夜嵐預けてありぬ傘と猪口虫の音の満ちくる宵や酒一壷
この人も病の話温め酒
秋:紅葉、秋刀魚
2011.8
幾度目と知らずまた来ぬ京紅葉破れ傘さし紅葉浮く露天風呂
目黒路は秋刀魚のにはか寄席
秋:星祭、二星(じせい) 、
2011.7
短冊に余る願ひの星祭
飾る街外れて明き二星かな
秋:菊、野菊、柿、秋祭、温め酒
2010.11
供へらる菊を見上ぐる去来墓群咲きてむしろさびしき野菊かな
啄木の追はれし里の残り柿
道ひとつ違へば暗し秋祭
銘を問ひぬるめを頼む温め酒

秋:厄日、紅葉狩
2010.11
乾く地に日照雨乗りだしてトロッコの窓紅葉狩
秋:後の月
2010.10
郷に来て待てば小雨の後の月駅頭に花売る灯
猫は尾を立てて震はす後の月
秋:秋思、銀やんま、鬼やんま
2010.9
薄翅
水を打つ尾の輝きや銀やんま

佇ちをれば道案内の鬼やんま
秋:秋暑し、秋立つ、鬼城忌
2010.9
秋暑しポケットラジオの甲子園托鉢の裾を返して秋立てり
駅で買ふだるま弁当鬼城の忌
秋:柿、紅葉
2009.11~12
落柿舎の柿を写して旅終ひひと雨に半身を削る紅葉かな
秋:柿、灯火親しむ
2009.10
ふらふらと柿採る竿の上りけり熱き茶に替へて灯火を親しめり
秋:良夜、紅葉、鱗雲、林檎、秋刀魚、秋雲
2009.9~10
橡許されて京の紅葉の宿をとる
うろこ雲肩書のなき名刺刷る
雨に剥く林檎の皮の長さかな
声大き客の残せし秋刀魚かな
秋雲やたれに別れを告げて来し
秋:秋入日、萍(うきくさ) 、草紅葉
2008.10
忘れてもよきこと多し秋入日萍の吹かれし水面雲白し
秋の湖腹を曝せしボートかな
啄木の寝転びし城草紅葉
秋:待宵(まつよひ) 、月、温め酒
2008.9~10
待宵や庭園灯のつつましく我が句さへよしと思はる月今宵
語る夜の温め酒や時もどる
秋:秋の山、野分、朝顔、虫の声
2008.9
秋山や雨より早く雨の音野分去り増へたる星の名を問はる
開港の絵飾る店や野分立つ
朝顔のわづかに揺れて雨兆す
行きつけの店閉ぢし跡虫の声
秋:迎火、酔芙蓉
2008.8~9
迎火や大徳利を選りてきし古稀迎ふ同級会や酔芙蓉>
秋:秋日和、紅葉、冬隣
2007.11
登り来て年寄り自慢秋日和城跡の夢の先なる蔦紅葉
散り急ぐ桜紅葉や川走る
黙祷に始まる集ひ冬隣
秋:青蜜柑、赤い羽根、鹿威し(ししおどし) 、秋夕焼
2007.10
詫び状や薄き皮剥く青蜜柑
旅行書に挿まれ三年赤い羽根
鹿威し夜は音やむ町家かな
坂下に長き影消ゆ秋夕焼
秋:敬老の日、秋の蝶、秋の蚊、蕎麦の花
2007.9~10
敬老の日も飲み慣れし酒一合秋の蝶駅の花屋の鉢に舞ふ
秋の蚊の生の一念我を刺す
かすかなる風のあるらし蕎麦の花
窓わづか開け蟋蟀
秋:震災忌、湿地(しめぢ)
2007.9
大川の蕉翁潤むや震災忌老猫の大きく伸びて震災忌
湿地生ふる山にてありし新開地

はらからの揃ひし膳に湿地かな
鍋に入りなほ丈競ふ湿地かな
秋:星祭、二星(じせい) 、七夕、墓洗ふ、秋の蝶
2007.7~8
それぞれに傘傾
みちのくの雨に二星の逢瀬かな

七夕や星座をふたつ知りしころ
妻と映るやけどしさうな墓洗ふ
墨鮮
秋:桜紅葉、晩稲、夜寒、冷ゆ、柿
2006.11
石割の桜もみじに日照雨夕日きてこがね色濃き晩稲かな
茅屋根の苔光りをる夜寒かな
岩風呂の一灯点り森冷ゆる
柿の実のみな残りをり昼雨戸
秋:ぶな黄葉、乱れ草(=芒)、木の実
2006.10
にぎはひは他所に任せてぶな黄葉 ※学校の予定地のまま乱れ草
木の実落つ一灯点る露天風呂
※ 「ぶな」は「木」偏に「無」。
秋:通草あけび 、鬼城忌、台風
2006.9
通草蔓手繰りて実なき猿の山
山主も知らず通草の熟れし時

枝豆や帰らざる日の佐渡おけさ
鬼城忌や昔はここに揚げ雲雀

鬼城忌や赤城は大き雲を置き

鬼城忌や入り日幾条
台風や居酒屋にあり預け猪口
・鬼城忌は村上鬼城の忌日で9月17日。
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