



1. お酒のマナー・心得 | |
2. お酒の種類別の飲用温度―― | |
3. お燗のつけ方 ―― | |
4. お酒と健康 ――その1<合間に水を飲む> ![]() | |
5. 酒量と酔い ――アルコールの処理能力 | |
6. お酒に関する言葉集――順次追加します |
1. お酒のマナー・心得
日本酒造組合中央会が掲げる「お酒のマナー10則」がいろいろな観点から忠言してくれます。
日本酒は、一人でも二人でも大勢でも、ともかく楽しく飲みたいものです。パーティー、宴会などで飲むときに心がけておきたいこと、また、健康のためにも、これだけは守りたいエチケットをまとめました。
一、 笑いながら共に楽しく飲もう
お酒を飲む時は愉快に楽しくが一番。怒ったり、やたらと議論を吹きかけたりするのは慎みたいものです。
(お酒は楽しく、は大原則である。自棄酒、涙酒もあるだろうが、それは1人でごゆっくりどうぞ。)
二、 自分のぺ-スでゆっくりと
適量をマイペースで飲むのが、本当のお酒の楽しみ方です。かけつけ3杯とか、勧められるままについ、はやめましょう。
(ゆっくりというのは長い時間ということではない。自分の酒量とペースを知ることが大切である。)
三、 食べながら飲む習慣を
飲む前に少し食ベ、飲むときは食べながら飲みます。アルコールの吸収を遅らせ、大事な肝臓を守ってくれます。
(胃壁を保護するためには大事なことだが、高カロリーのアルコールに加えて脂肪や含水炭素の多い肴を摂ると肥満の原因となるので気をつけよう。)
四、 自分の適量にとどめよう
適量だなと思ったら、どんなに勧められても、そこでストップ。断る勇気のある人こそ、本当のお酒好きだと思います。
(適量にはかなりの個人差がある。盃1杯でダメになる下戸もいるが、アルコール処理能力からみて、通常日本酒1~2合、ビール1~2本ならまず問題ない。)
五、 週に2日は休肝日を
できれば2日続けて肝臓を休ませましょう。タフな肝臓は、休ませることで、急速にその機能を回復させます。
(これがなかなかできなくてという人は多い。飲めるのは体調がいいからだと自ら納得して-今日も元気だ、タバコがうまい、と同じ発想-いる。飲むのが習慣なら、飲まないのも習慣づけられるはず、最低、続いたな、飲みすぎかなと思った翌日は敢然とやめる。なお、家人は調子が悪いの?などと決意を鈍らせる質問はしないこと。)
六、 人に酒の無理強いをしない
人それぞれのペースを認め、守りあうのがお酒のみのマナーです。さしつさされつはほどほどに、後はマイペースで楽しみましょう。
(最近は以前のような献酬がほとんどなくなり、大変結構なことである。それぞれの酒量とペースを尊重して飲るのが大人の飲みかた。しかし遠慮して飲まないような人には優しくときどき盃を満たしてあげよう。)
七、 くすりと一緒には飲まない
薬もアルコールも、同じ肝臓が分解します。一緒に飲むことで、身体に悪い影響が出やすいので、避けましょう。
(効き過ぎたり、効かなくなったりする。薬は異物であり肝臓で毒消し処理をする。アルコールと一緒では荷が重いのは当然だ。「百薬の長」の酒だけを飲んで寝た方が良い病気もいっぱいあるのである。)
八、 イッキ飲みはしない、させない
急性アルコール中毒の原因になりますから、絶対にいけません。お酒好きなら、やめさせるのが常識です。
(イッキ飲みは最近は大分減ったようだが、若気の至りというだけで済まないこともある。あなた自身は大丈夫でしょうが、若い人でイキがって早飲みする人にはそっと注意してあげよう。)
九、 遅くても夜12時で切り上げよう
飲み会は、楽しいうちにお開きにするのがマナー。その後のお酒は「百害あって一利なし」。終電前には帰りましょう。
(それまで起きていられない人には関係ないだろうが、なぜか飲むと元気になるんですね。が、ゴゼン様は疲労のもとだということを忘れずに。酒を飲まずに夜更かししても疲れるのに。)
十、 肝臓などの定期健診を
年に数回は定期的に健康診断を受け、自分の健康度を知っておきましょう。身体を悪くしてからでは遅すぎます。
(胃は不快感や痛みなど症状が出るが、物言わぬ臓器の真の訴えも聞かなければならない。結果が良いといって油断しないことが肝要。)
( )内は小生のコメント。
実はこの「10則」は、社団法人アルコール健康医学協会のいう「適性飲酒の10か条」とほぼ同じである。酒造協会「10則」の「八、 イッキ飲みはしない、させない」という項目が、
アル研「10か条」(第8項)では、
となっている違いだけである。強いアルコール飲料は薄めて
強いアルコール飲料は、のどや胃腸の粘膜に強い刺激を与えます。喉頭がんや食道がんの原因になることもあります。
また、つい飲み過ぎるために、すぐに酔いがまわり障害をおこす要因になります。
こういったことをさけるためにも強いアルコール飲料は薄めて飲むようにしましょう。
おそらく アルコール健康医学協会のものを酒造組合中央会が借りた(でなければ、アルコール健康医学協会が啓蒙のため中央会に掲載を頼んだ)のだと思う。
第8項は、日本酒は基本的に薄めて飲むものではないこと、ビール、ワイン、ウィスキー水割り、焼酎お湯割りなどと比べて日本酒が相対的に強い酒になっていることから、意識的に置きかえたのだろう。
そのあたりの詮索は別として、これを加えて「11か条」としておく。
「松尾大社」の服酒御守
「おさけ」トップページに掲げている洛北の総鎮守「松尾大社」の服酒御守のこの文言は、わが身を省み気に入って拳拳服膺している言葉である。
読んで字の如し、いい得て妙、と思う。酒は神授の生薬。
服して心を乱さず、体を損ぜず、礼を失わず、和を破らず。
適時適量慎んで用ひざれば久しきに堪えざるべし。
-了-
('05.03.13)
2. お酒の種類別の飲用温度 ――お燗と“冷や”
3. お燗のつけ方
――“アツ燗”だけではない4. お酒と健康――楽しく飲みましょう


最近日本酒を飲むとき、水を一緒に飲もうというキャンペーンのようなものがある。日本酒造組合中央会は『「和らぎ水」で飲む、大人のための日本酒指南』というリーフレットを作り、普及にあい努めている。
別のリーフレット「日本酒ほろ酔い健康法」にその説明がある。
‘合いの手に水をさすのは酔い上手’「お酒のマナー・心得」で述べたように酒造協会の「10則」、アル研の「10か条」のひとつ「強いアルコール飲料は薄めて」を「イッキ飲みはしない、させない」置き換えた。
日本酒の合間に水をさすのは、正しい飲み方です。
といっても、水で割るということではありません。
日本酒のグラスの横においしい水を用意して、ときどき飲んでください。
深酔いを防ぐ上に、日本酒をよりおいしく味わえます。 <以下略>
この裏には日本酒が相対的に強い酒の部類になってきたこと、がある。
アルコール度数をみれば、
これに対し日本酒は、まれに原酒(20度弱)などをオンザロックで飲むことはあるが、水や他の飲料で割ることはほとんどない。
他の酒類に負けないためにはと編み出されたのが「和らぎ水」(「和み水」ともいう)である。洋酒にチェイサー、をなぞった。普段日本酒を飲らない人、日本酒から他に(特に焼酎)鞍替えした人を日本酒に引き寄せる狙いがあるのだろう。
日本酒は飲み進むにつれ口中にねばっこさが残り、爽やかさはない。舌の感覚が鈍ってくる。冷やして飲むと少しは緩和されるが、それは後の冷えた酒が不快さを洗うからである。でも最終結果は同じだ。
水を飲む効用は――
水を飲むと口中のいやみが流され、味覚が戻る。飲み口がいつもさっぱりする。お酒本来の味がよみがえる。
酔いがゆっくり来るので健康にもよいはずだ。お酒の弱い人、弱くなった人にはお奨めしたい。
ただし、飲み口の良さが逆に飲み過ぎを誘う。特にイケる人はこれだけは気をつける必要がある。
同じ量で終わるのなら水を飲みながらやるほうが、よい。
どれ位の水か。
酒1合につき2,3回。酒の量の3分の1~4分の1程度であれば水腹にならない。これで腹の中ではアルコール度数は11度に下がる。他の「弱い」アルコール飲料に対抗できる。
あまり頻繁に水を含むと酒を飲んでいるのか水を飲んでいるのか分からなくなるし、胃がだぶつく。
また、一口ごとチェーサーをとるのでは、日本酒の酔い心地を常に追い払うことになる。
初めからコップにお冷や(水)をと頼むと店の人は怪訝な顔をするかも知れないが、意に介しない。
どういう種類のものを飲むか、どのように飲むかは、所詮各人の好みではある。いろいろ試してみてください。
('05.06.02)
5. 酒 量 と 酔 い ――アルコールの処理能力
どれくらい飲めるのか。どれくらい飲めば、どれくらい酔うのか。
勿論人によって違う。特に総じて「アルコール分解酵素」が少ないといわれる日本人は個人差が大きい。日本人だけでなく東洋人全般に共通である。
体内に入ったアルコールは、胃と小腸から吸収され血液を経て肝臓に入り、アセトアルデヒドに変わり、更に酢酸となって、最終的には水と炭酸ガスに分解される。
それぞれの段階で反応を促進する酵素が必要だが、とりわけアセトアルデヒド分解酵素(アセトアルデヒド脱水素酵素=ALDH)が重要である。
アセトアルデヒドは毒性を持っており、体内に滞留すると顔が赤くなったり、心悸亢進や吐き気を催したり、などのさまざまなワルサをする。二日酔いの元凶と目されている物質である。
アセトアルデヒド脱水素酵素は何種類かあり、
① アセトアルデヒドが増えないと働かないタイプ = ALDH1
② 少量のアセトアルデヒドでもせっせと分解するタイプ = ALDH2
があり、
ALDH2 にはさらに、 | ②-Ⅰ | 力が強いALDH2*1 | ◆ | と、 |
②-Ⅱ | 働きの弱いALDH2*2 | ◇ | がある。 |
どちらかのタイプの酵素を持つ両親の遺伝子を受け継いでいるため、◆+◆、◆+◇、◇+◇ の三つの型の人がいる。(血液型の継承と似ている)なお、欧米人は ◆+◆型しかいない。
飲めないあるいは弱い人、すぐ悪酔いする人は、アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱いためにうまく無毒化できない人であるから、決してお酒を無理強いしてはならない。
訓練すればある程度飲めるようになるのも確かである。
これは、アルコールの量が多すぎて ALDH だけでは処理しきれない場合に働くミクロゾームエタノール酸化酵素(MEOS)という酵素があるからである。
訓練によりこのバイパスのような MEOS を増やすことができるのである程度まではイケるのである。
人がアルコールを分解する能力は、体重1kgあたり1時間につき0.1gとされる。
体重65kgの人の処理能力は、1時間に6.5g、1日160gとなる。
この公式によれば体重が多いほど余計飲んでいいということになり、相撲取りが鯨飲する根拠はある。
この処理能力でこなせる酒の量は、――
日本酒はアルコール度数15度としておこう。1合(180ml)中の純アルコール量は27ml、1日の処理能力の160gは、日本酒6合にあたる。そうか6合でも大丈夫なのかと早合点してはならない。
飲み終わるのは何時ですか。仮に盛り上がって夜7時に飲み始めて5合も飲んで10時に終わったとする。
飲んでいる3時間に20g(=0.1g×3h×65kg)を処理する。体内にある未処理の純アルコールは115g(=900ml×15%-20g)もある。この処理には18時間(=115g÷6.5g)も要する。朝7時に起きるとまだ60ml近く体内にとどまり、午後4時にならないとアルコール全部は抜けない。
せっかく疲れを取ろうとして飲んだ酒だが、二日酔いにならずともスッキリ感はむろんない。仕事時間中ずっと体=肝臓に余計な仕事をさせる結果になる。
こんなことは早々に分かっていて自戒してはいるのだが。
酒量と酔い、体や行動についての「酒量と酔い」の表を参考にして下さい。
-了-
('05.03.13)
6.お酒に関する言葉集
――作業継続中勧君金屈巵 | コノサカヅキヲ受ケテクレ | 君に勧むる金屈巵(黄金の盃) |
満酌不須辞 | ドウゾナミナミツガシテオクレ | 満酌辞すべからず |
花発多風雨 | ハナニアラシノタトヘモアルゾ | 花ひらけば風雨多し |
人生足別離 | 「サヨナラ」ダケガ人生ダ | 人生別離に足る |
(原詩:干武陵、訳詩:井伏鱒二『厄除け詩集』) |